フィリピン「第13次外国投資ネガティブリスト」の施行と実務への影響

フィリピンへのビジネス進出や投資を検討する際、必ず確認しなければならないのが「外国投資ネガティブリスト」です。
2026年4月13日、マルコス大統領は大統領令第113号に署名し、最新の「第13次外国投資ネガティブリスト」を発出しました。本リストは5月2日に正式施行されています。

今回の改定は、ここ数年で進んだ小売業や公共サービス分野の規制緩和(法改正)をリスト上に正しく反映し、実務上の表記のズレを解消することを目的としています。

本記事では、主要な変更点や実務の注意点を解説します。

目次

「外国投資ネガティブリスト」とは

外国投資ネガティブリストとは、外国法人が100%出資して経営することが認められない「制限業種」を一覧化したものです。逆に言えば、このリストに載っていない業種であれば、原則として外資100% の現地法人を設立して進出することが可能です。

リストは大きく以下の2部構成となっています。

  • List A: 憲法や個別の特別法によって、外資の参入が禁止・制限されている業種。
  • List B: 国家安全保障や国内の中小企業保護などの観点から、大統領令によって制限がかけられている業種。

1.主要セクターにおける3つの変更点

1-1.小規模小売業:外資40%枠の明文化

2022年の法改正により、払込資本金2,500万ペソ以上の小売業は外資100%での進出が可能になりました。
一方で、2,500万ペソ未満の「小規模小売業」について、前回の第12次リストでは「外国法人の参入は一切不可」と捉えられる表記になっていました。そのため、「40%以下の出資であれば参入可能」という法律上の解釈はあったものの、実務上は判断が難しく、進出を躊躇する要因となっていました。

今回の第13次リストではこの点がクリアになり、「払込資本金2,500万ペソ未満であっても、外資比率40%以下であれば参入可能」であることがはっきりと明文化されました。
現地パートナーが60%以上の議決権を有する形であれば、日系企業が一部出資して合弁会社(JV)を作ったり、現地の小売企業に出資したりするスキームが正式に認められたことになります。

1-2.電気通信:外資100%での参入を反映

これまで複雑だった電気通信(Telecommunication)分野の外資規制ですが、近年の法改正(改正公共サービス法)の動きに合わせ、今回の第13次リストで正式に「外資100%での参入が可能」な業種として整理されました。
これにより、日本の通信企業などがフィリピンで単独で事業を展開しやすくなります。

ただし、進出企業の国でもフィリピン企業に対して同様の権利を認めているかという「相互主義」の要件を満たす必要があります。もしこの条件を満たさない場合は、外資の上限が50%に制限される点には注意が必要です。

1-3.再生可能エネルギー:外資100%参入が正式にリストへ明記

2022年11月の司法省見解(DOJ Opinion No. 21, s. 2022)や天然資源省(DENR)の行政命令等によって外資100%での進出が進められていましたが、今回の第13次リストに正式に「100%可能」として明記されました。

具体的には、以下について外国資本の100%参入が認められると記載されています。

  • (a) 鉱物、石油、その他の鉱物油の大規模な探査、開発、および利用を対象とする、技術的または資金的援助を伴う大統領との間で締結された協定(再生可能分野に関するものと解釈される)
  • (b) 太陽光、風力、水力、海洋エネルギーまたは潮力エネルギーなどの再生可能エネルギー

ただし、自然水源からの直接の取水を含む、天然資源の探査、開発、および利用には引き続き外資40%以下に規制されます。

2.進出時に知っておくべき実務上のハードル

2-1.「アンチダミー法」による経営関与の制限

小規模小売業などに外資40%で参入する場合、名義貸しや実質的な規制破りを防ぐためのアンチダミー法(Anti-Dummy Law)に抵触しないよう注意が必要です。外資側の出資が40%以下である以上、株主間契約において実質的な経営支配権を持たせたり、過度な拒否権を設定したりすることは認められません。また、外国人取締役の人数も出資比率(40%であれば全体の4割以下)に比例させる必要があります。

2-2.政府調達および防衛関連の新規制

2024年の新政府調達法に基づき、政府調達(物品・インフラ・コンサル等)は原則として外資40%以下に制限されます(高度な技術が必要なインフラ工事に限り例外的に最大75%まで容認)。また、同年の自立防衛体制活性化法を反映し、軍需品の開発・製造・運用などが「List B」に追加され、外資40%以下に制限されました。

3.維持される主要規制

今回の改定でも、憲法に由来する根幹的な外資規制は維持されています。外資上限比率は、以下のように整理されます。

外資上限比率対象となる主な業種・分野
0%(完全禁止)マスメディア(ネット事業等を除く)、民間警備業、専門職の実践(一部例外を除く)など
25%以下人材紹介業、防衛関連工事
30%以下広告業
40%以下土地所有、天然資源の探査・開発・利用、公益事業(配電、送電、石油パイプラインシステム、上下水道、海港、公益事業車両)、教育機関
原則40%以下国内市場向け一般企業(払込資本金20万米ドル未満。ただし先端技術活用や15名以上の現地雇用があれば10万米ドルに緩和)

【憲法改正と土地所有のゆくえ】

マルコス政権下において、公益事業、教育、広告分野の外資規制を法律で柔軟に変更できるようにするための憲法改正(経済条項の緩和)の議論は継続して行われています。

また、外国投資家からの要望が強い「外資による土地の完全所有」について、マルコス大統領は不動産価格の暴騰の可能性に触れ、反対の立場を明確にしています。そのため、土地所有規制の緩和について見通しは立っていません。
外国企業は引き続き、長期土地リース契約(通常50年、延長により最大75年)等の進出スキームに依存することになります。

4.まとめと今後の進出アプローチ

第13次外国投資ネガティブリストの発出により、過去数年間で進められてきた主要な法改正とネガティブリスト上の表記のズレが解消され、外資受け入れに関する制度の透明性が向上しました。

特に小売業への緩和については、急成長するフィリピン市場をターゲットにとした日系企業の進出にとって追い風となります。とりわけ小売業に分類される飲食業においては、日本食の人気が年々高まっていることから、大きなチャンスとなります。

しかし、フィリピンの進出実務においては、ネガティブリストに記載がない業種であっても、各監督官庁が独自に発行する覚書(Memorandum Circular)やガイドラインによって、実質的な外資比率の制限やライセンス要件が課されるケースが多々存在します。

日系企業が現地への新規進出、合弁会社の設立、または既存事業の拡張や持分比率の変更を検討する際は、ネガティブリストの文面のみで判断せず、対象ビジネスの具体的なビジネスモデルが個別セクター法やアンチダミー法、各省庁の最新の見解に抵触しないか、事前に現地法務に精通した専門家を交えて精査することが推奨されます。

弊社では会社の設立のサポートを行っておりますので、会社設立をお考えの際はぜひお気軽にお問い合わせフォームまでご相談ください。

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