フィリピンにおけるCAS/EISの概要

 フィリピンでは政府を中心に会計税務領域におけるデジタル化を加速させる動きがあり、近年BIRより会計システム登録および電子インボイスに関する方針や法令等がアップデートされています。

 特に2022年6月30日の公表(RR No.8-2022)では、コンピュータ会計システム(CAS)の登録を行う対象範囲が明確化された他、電子請求書・領収書システム(EIS:Electronic Invoicing/Receipting System)を通じた電子領収書・電子請求書(e-Receipts/e-Invoices、電子インボイス)発行の対応方針が規定されています。

 なお、2023年6月現在、会計ソフトのCAS登録については準備を進めることが可能ですが、EISについてはBIRによるシステム確立が未完了であり、引き続き100社の納税者と共にパイロットテストが行われている段階にあるため、今後のEISに関する追加情報を待つ状態となっています。

 本編では、コンピュータ会計システム(CAS)および電子請求書・領収書システム(EIS)についての概要をお伝えいたします。

 

電子請求書・領収書システム(EIS)に関する経緯

 2018年1月1日施行のTRAIN法第237条では、BIRにて5年以内に必要データの保管・処理するシステムが確立した段階で、電子請求書・領収書システム(EIS:Electronic Invoicing/Receipting System)を通じて電子領収書・電子請求書を発行することが規定されていました。

 その後、依然として具体的な手続きや期限は示されていないものの、以下のRR No.8-2022による公表において踏み込んだ方針が発表されています。

 

CAS登録、電子領収書・電子請求書発行およびEISの対応が求められる納税者

1.物品もしくはサービスの輸出に従事する納税者
2.電子商取引(eコマース)に従事する納税者
3.大規模納税者

該当する納税者が対応すべき内容

1.電子領収書・請求書の発行
2.電子領収書・請求書を発行するためのCAS登録、および/またはCRM(キャッシュレジスターマシン)・POS登録、販売データ送信システム(Sales Data Transmission System)登録
3.電子領収書・請求書発行の対象となる販売データを販売データ送信システムを使用して、BIRのEISに送信する(2.電子商取引に従事する納税者は対象外)

方針およびガイドライン

1.API(Application Programming Interface)ガイドラインに基づき販売データ送信システムを構築する
2.対象の販売データをEISに送信する前に事前登録する
3.構築された販売データ送信システムは、EISを通じてBIRより認証を受ける。EIS CERTの申請を行い、許可を受ける
4.販売データをEISに送信するために、Permit to Transmit(PTT)の申請を行う
5.ソフトウェアプロバイダーの役割等に関わらず、EIS CERTおよびPTTの申請は可能
6.PTT発行後速やかにの取引に関する販売データ報告を行う
7.販売データの送信はリアルタイムとし、取引日から3日以内に行う
8.暗号化されEISに送信される販売データは、JSON(Java Script Object Notation)ファイルフォーマットとする
9.認証を受けた納税者のみがEISにアクセスする
10.販売データの送信漏れおよび遅延にはペナルティが科せられる
11.電子領収書・請求書の発行の対象外となる納税者は、引き続き手書き領収書・請求書や、CAS/POSにて発行された領収書・請求書を利用する。また、各規定に基づいて電子領収書・請求書の発行を行うことも可能
12.EISを使用する納税者のSLS(Summary List of Sales)提出は不要。ただし、SLP(Summary List of Purchases)、SLI(Summary List of Importations)は提出する。

 

コンピュータ会計システム(CAS)の概要

 フィリピンにおいては、未だ手書き帳簿を作成してBIRに提出する実務が主流です。
 一方で、ルースリーフ(Looseleaf)登録をすることで、会計ソフトの帳簿データをBIRに準拠した形式に集計し直した印刷物を提出することも可能であり、さらに、コンピュータ会計システム(CAS)を登録することで、ペーパーレスでの帳簿データの提出も可能となっています。

 なお、今までにBIRより認証を受けたことがない会計ソフトにおいて、新たにCAS登録を行う場合、BIRによるシステム要件の確認、評価、改修等に伴う膨大な労力がかかることから、通常、納税者は既にBIRより認証を受けCASに対応している会計ソフトを利用することとなります。その上で、一般的にCAS登録とは、納税者が当該会計ソフトを使用するための許可を得る手続きを指します。

 このCAS登録を巡っては、近年まで手続きが遅々として進まない問題がありましたが、2021年1月8日のRMC No. 5-2021等を通じて、CAS登録における手続きが簡素化および早期化されています。そのため、2023月6月現在において、ソフトウェアプロバイダーおよび会計事務所等のサポートを得ることで、スムーズに進めることが可能となっています。

 

CASに対応している会計ソフトの一覧

 2023年6月現在、BIRより承認を受けている主要な会計ソフトには以下があります。(他にもありましたらぜひお知らせください。)

・SAP S/4 HANA(https://www.sap.com/sea/index.html)
・Oracle Netsuite(https://www.oracle.com/ph/)
・mcflame(https://www.mcframe.com/partner/n-pax.html)
・QNE(https://www.qne.com.ph/)
・Smartbooks(https://smartbooks.com.ph/)
・Multibook(https://www.multibook.jp/case/case_category/country/philippines/)

 現在利用している会計ソフトからの切換えを検討している場合、上記のソフトウェアプロバイダーまたは代理店に説明やデモを依頼し、CASに対応していることを確認した上で、導入を進めると良いでしょう。

 

 上記のとおり、近年のデジタル化の指針に伴い、複数のガイドラインや法令等が公表されている一方、内容には未だ不明瞭な点が多く、日系企業においては流動的な対応が求められています。
弊社では、各種登録手続きや会計税務を中心としたアドバイザリー業務、記帳代行、税務申告等を行っておりますので、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

 

 

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投稿者プロフィール

Kazuki Hibino
Kazuki Hibino
独立系コンサルティングファームにて、M&A事業部、内部監査室を経て、2015年にフィリピン赴任。その後、外資系コンサルティングファームに転職し、主に国内上場企業のM&AにおけるFA業務を経験。2023年にフィリピンにて独立。