セブ島で進行中の再開発プロジェクト

 セブ島は、近年フィリピンで最も成長している地域であり、ドゥテルテ政権の「BUILD BUILD BUILD (BBB) Program」政策の一環として、多数のインフラ開発プロジェクトが進行または計画されています。

 本編では、2023年現在、進行中または計画中の主なプロジェクトを紹介します。
(2023年7月時点の英文公表記事を基に作成しており、不正確な記載を含む可能性があります。)

 

 

・セブ・コルドバリンク高速道路(Cebu-Cordova Link Expressway:CCLEX)

 セブ市とマクタン島を結ぶ第3橋梁であるセブ・コルドバリンク高速道路(CCLEX)は、2022年4月に開通しました。
CCLEX開通後は、セブ市とマクタン島の往来に係る交通渋滞が緩和され、現在は周辺地区に数多くの商業施設の建設が進んでおり、更なる地域経済の成長が見込まれています。

 

・メトロセブ高速道路(Metro Cebu Expressway)

 本プロジェクトは、セブ市を中心とする南北74kmの高速道路であり、280億ペソの予算で建設が進んでいます。
 ルートとしては南部Naga(ナガ)から南部Danao(ダナオ)を繋ぐ高速道路として機能し、山脈の斜面に沿って南北に横断します。

 本プロジェクトは、以下の3つのセグメントに分かれて工事が進行しています。
 ①Talisay(タリサイ)-Cebu(セブ)-Mandaue(マンダウエ)
 ②Consolacion(コンソラシオン)-Liloan(リロアン)-Compostela(コンポステラ)-Danao(ダナオ)
 ③Naga(ナガ)-Minglanilla(ミングラニジャ)

 メトロセブ高速道路の完成後は、セブ市内の渋滞が大幅に緩和されることが見込まれており、さらに南北地域の経済活動が活性化することが想定されます。

 

・セブバス高速輸送(Cebu Bus Rapid Transit:BRT)

 セブバス高速輸送(BRT)システムは、セブ市にバス専用道路が配置されるものです。160億ペソと見積もられる費用は世界銀行とフランス開発庁が資金提供し、実装はDOTrとNEDAが主導しています。現在、交通渋滞の解消と公共交通の効率化を目指し、市内ではバス専用道路の建設が進んでいます。

 ただし、2022年4月28日にクエンコ議員から「現在の設計では狭い道路がプロジェクトのルートに含まれているため、市の交通問題をさらに悪化させる可能性がある」との発言があり、当初のルート設計を一部変更し、市内に地下鉄システムを推進する案も囁かれています。

 

・セブモノレール/ライトレールトランジット(Cebu Monorail/LRT)

 フィリピン初の地方都市向けモノレールシステムで、二つの路線(総延長約27km)によりセブ市の主要地点を結ぶ日本のプロジェクト案です。

 当初2021年に建設が着工となる予定でしたが、2023年現在においても当局の承認取得に至っておらず、具体的な予定は不明となっています。

 

・セブ・マクタン第4橋梁(4th Cebu-Mactan Bridge)

 セブのマンダウエ(リロアン方面)とマクタン北部を結ぶ第4橋梁および沿岸道路のプロジェクトが進んでおり、約800億ペソの費用に対して、国際協力機構(JICA)を中心に1,192億円の融資が行われています。

 

・マクタン・セブ空港の拡張(MCIA 2nd runway)

 マクタン空港では2018年7月に新ターミナルがオープンし、利便性・安全性が大きく向上しました。
 現在マクタン空港では第2滑走路の拡張工事が進んでおり、当局の発表では、時間当たりの空港容量を25%拡大させる目標が述べられています。

 

・セブ南港およびコンテナターミナル複合施設 (CSHCTC)

 セブ市の中心から南に位置するTalisay(タリサイ)では、2018年11月よりCSHCTCプロジェクトへの着工が開始しました。
 周辺地区では、コンテナターミナル、商業施設、レジャー施設、住宅地区、公園、ビジネス地区等を含む大規模な再開発が計画されています。
国際港として輸入処理、通関、引き出しのクリアランスが実施できるよう税関局とも連携を進めており、バルクキャリア、クレーンや倉庫等を完備したコンテナヤードが建設される予定です。

 また、CSHCTCプロジェクトにより、セブ国際港の混雑を緩和し、セブ全体の経済規模が拡大することも期待されています。

 

・新セブ国際コンテナ港(NCICP)

 セブ市の中心から北に位置するConsolacion(コンソラシオン)の埋立地(25ha)に、橋、アクセス道路、港湾施設、岸壁500mの停泊施設等を建設するプロジェクト案が発表されています。現在のセブ国際港で取引量が増加している中、この新しい国際ターミナルは長期的な解決策とされています。
物流インフラ強化により、セブ国際港の慢性的な渋滞が緩和され、ビサヤ地方での商品やサービス流通がスムーズになることが期待されています。

 なお、2023年3月のNEDA(National Economic and Development Authority)の発表では、2022年8月に開始される予定であったNCICPの基礎工事は実現せず、交通省(DOTr)からの本プロジェクト入札者の選定結果の発表はまだありません。そのため当初の完了予定である2024年第4四半期からは大幅に遅延することが想定されます。

 

 現在、フィリピンの経済成長率は一貫して約6%と、日本と比較して高く推移しており、非常に魅力的なマーケットがあります。
 特にセブにおいては、上記に挙げた複数の大規模プロジェクトが進むことにより、今後10年間で更にセブ島のインフラが大幅に改善することが見込まれます。
これにより、人の往来が増えるとともに、物流に係るコストが大きく改善され、加速度的に経済成長が進むことが想定されています。

 

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投稿者プロフィール

Kazuki Hibino
Kazuki Hibino
独立系コンサルティングファームにて、M&A事業部、内部監査室を経て、2015年にフィリピン赴任。その後、外資系コンサルティングファームに転職し、主に国内上場企業のM&AにおけるFA業務を経験。2023年にフィリピンにて独立。