セブ島での起業-マニラとの比較

 近年、海外において事業を展開する日本人起業家が増えています。その中でもフィリピンの成長は著しく、特にマニラと並んでセブ島が注目を集めています。

 本編では、起業家がなぜセブ島に着目するのか、その理由と魅力について掘り下げてみましょう。

 

 
  セブアヤラビジネスパーク周辺。新しいビルが次々と建設されている

 

地理的な利点

 セブ島は、フィリピンの中心部に位置しており、フィリピン全体・東南アジア全体からのアクセスが良好です。そのため人の往来、物流、情報の交換が容易に行われ、ビジネス規模が拡大し易いという地理的な利点を有しています。

 特に東京からは直行便で4~5時間程度と非常に近く、フィリピン航空(Philippine Airlines)、セブパシフィック航空(Cebu Pacific)、エアアジア航空(Airasia)がそれぞれ就航しています。マニラ経由便も含めると数多くの格安航空(LCC)が常時発着しており、移動の敷居が低いことが特徴です。

 また、日本やマニラと比較して、気軽に南国リゾート気分を味わうことができ、場所を選ばないITエンジニアやテレワーカー等を始めとして、ワーケーションにも最適です。

 他方、製造業にとっては、マクタン空港から10分の位置にマクタン経済特区(MEPZ)があることも魅力で、MEPZ 1(150ha)、MEPZ2(63ha)、Cebu Light Industrial Park/CLIP(62ha)があります。なお、MEPZ1の300社超の入居企業のうち、実に78社を日系企業が占めています。
 製造業にとって、現時点ではセブ国際港の逼迫状況に課題がありますが、インフラ開発計画がセブ内で進行中です。
セブ島で進行中の再開発プロジェクト

 

生活コストとビジネスコスト

 マニラの中心地のオフィス家賃が高騰している一方、セブ島の生活費やオフィス家賃は比較的安いと言われており、特にスタートアップ企業にとって大きな魅力となります。初期の運転資金を最大限に活用することにより、ビジネスが安定するまでのリスクを軽減することが可能です。2024年6月時点での参考値としては以下のとおりです。

オフィスの家賃:
 マニラのビジネス地区(例:マカティ、ボニファシオ・グローバルシティ)でのオフィスの家賃は、平米1,000-2,500PHP(約3,000-7,000円)程度です。
 一方、セブ島の主要なビジネス地区では、平米600-1,500PHP(約2,000-4,000円)となります。

生活費:
 日本人単身のマニラでの一般的な生活費(家賃、食費、交通費等)は、60,000-150,000PHP/月(約150,000-400,000円)程度が一般的です。
 一方、セブ島での生活費は、同様の生活レベルを保つためには、50,000-100,000PHP/月(約120,000-250,000円)程度となります。

人件費:
 マニラの2023年7月16日以降の最低賃金は610PHP/日(約13,000PHP/月)、セブ市は2023年10月1日以降468PHP/日(約10,000PHP/月)となっています。
(2024年2月19日に上院にて最低賃金を全国一律100PHP引き上げる法案が可決しており審議が継続しています。)

 フィリピンにおける一般的なIT技術者や専門職の平均月給は、40,000-70,000PHP、役職者は100,000PHP~等となり、単純にマニラとセブ市とを比較することはできません。しかしながら、セブ市には周辺の同ビサヤ地域の大学からの卒業生を含めて人の流入も多く、一般的にはセブ市の方が安価であると言われています。

 

英語人材の豊富さ

 セブ島は優れた教育環境に恵まれており、特に流暢に英語を話すフィリピン人材が多く、国際ビジネスを展開する上で有利となります。また、英語が苦手な方にとっては、周辺に語学学校が多く、英語を上達させる環境も手に入れやすいというメリットがあります。

 さらにセブ島は留学先として人気であり、暮らしやすいと感じる日本人も多いため、留学後にセブ島に移住し、現地就職をする人材が多くいます。現地で日本人を雇う場合にも、採用の障壁が各段に低いことも大きなメリットとなっています。


  セブ中心から40分の距離にゴルフ場が3つ存在している

ITインフラの整備

 セブ島は以下のとおりITインフラが整備されており、IT関連のビジネスを行うには非常に適した環境です。

1. ITパークと特別経済区
 セブ島にはセブITパークやマクタン経済区など、ビジネスとテクノロジーの発展を後押しする地域が存在します。これらの地域は、最先端のインフラを備えたオフィススペースを提供し、企業がビジネスを展開しやすい環境を作り出しています。また、税制優遇(PEZA)や法人設立の手続き簡素化等、ビジネスを行う上での様々な利点が提供されています。
さらに、日系のコワーキングスペースも複数存在していることから、スモールスタートの法人や個人事業者が安心して事業を行うことができます。

2. 高速インターネット接続
 セブ島はフィリピンの中でもインターネット接続が安定しており、速度も比較的高速です。特に、ITパークや経済特区では、ビジネスに必要な高速で安定したインターネット接続が提供されています。このような環境は、IT関連のビジネス、特にソフトウェア開発やデジタルマーケティング等の分野で活動する企業にとっては必要不可欠です。

3. IT人材の豊富さ
 セブ島は、IT専門家やエンジニアの豊富な人材プールを持っています。多くの大学や専門学校でIT関連のコースが提供されており、卒業生は最新の技術を学び、実践的なスキルを持っています。また、英語教育のレベルが高いため、国際的なプロジェクトで活躍できるIT専門家が多いです。

4. BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)業界の存在
 セブ島はBPO業界の中心地としても知られ、主にカスタマーサービス、ITサポート、ソフトウェア開発、デジタルマーケティングなど、様々な分野でサービスを提供しています。IT企業が多いことにより、IT人材が育つ土壌があり、更に高いスキルを持つ人材が集まる流れがあります。

  
セブ島からはビーチやダイビングスポットへのアクセスも容易

 以上のような理由によって、特にIT関連やBPOのビジネスを行うにはセブ島が非常に適した環境となっています。

 マニラにおいては、日系上場企業の子会社が多く拠点を置いているイメージがありますが、セブはよりスモールな事業者が多く、日本人のフリーランスの方も一定数いることから、起業に関しての情報が得られやすいという点も重要なメリットです。

 セブ島における会社設立をお考えの際はぜひお気軽にお問い合わせフォームまでご相談ください。

 

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投稿者プロフィール

Kazuki Hibino
Kazuki Hibino
独立系コンサルティングファームにて、M&A事業部、内部監査室を経て、2015年にフィリピン赴任。その後、外資系コンサルティングファームに転職し、主に国内上場企業のM&AにおけるFA業務を経験。2023年にフィリピンにて独立。