フィリピンにおける個人所得税の概要

 フィリピンでは、日本と同様に累進課税が適用されており、その最高料率は35%となっています。税制改革第1弾(TRAIN法)に伴い、2023年1月より個人所得税の大幅な見直しが実施されています。

 本編においては、フィリピンにおける個人所得税についてご紹介します。

 

 

1.個人所得税率

 2023年1月現在、フィリピンにおける個人所得税は、以下のとおりです。なお、課税年度は1月1日~12月31日の暦年となっています。

課税所得 税率
0 – 250,000 PHP 0%
250,001 – 400,000 PHP 250,000を超過している所得に対して15%
400,001 – 800,000 PHP 22,500 + 400,000を超過している所得に対して20%
800,001 – 2,000,000 PHP 102,500 + 800,000を超過している所得に対して25%
2,000,001 – 8,000,000 PHP 402,500 + 2,000,000を超過している所得に対して30%
8,000,001 – PHP 2,202,500 + 8,000,000を超過している所得に対して35%

 2023年7月現在、フィリピンの平均賃金は約105,000PHP/年(約8,750PHP/月)と推計されており、メトロ・マニラ(NCR)の非農業就業者の最低賃金は2023年7月16日以降の610PHP/日(約13,270PHP/月)、セブ市は2022年6月4日以降435PHP/日(約9,460PHP/月)となっております。これは上記の表の課税所得250,000PHP/年を下回っているため、大部分のフィリピン人については所得税が非課税となっています。

 一方、専門職の給料は近年急速に上昇しており、高給なフィリピン人によって税収が確保されているという実態となっています。

 また、フィリピンは日本同様に累進課税を採用していますが、最高税率は日本よりも低く、所得税が安いととらえることもできます。

 

2.主な非課税所得

 個人所得税は、総所得から下記のような非課税所得を控除して算出します。有効に非課税所得枠を利用することにより、従業員の所得に対する課税を減額させることが可能となります。

・生命保険金
・社会保険料の従業員負担分
・13ヶ月給与およびその他手当(PHP90,000/年)
・少額手当 (De Minimis)(合計最大PHP90,000/年)

 1. 年10日以内の未使用有給休暇の買取分
 2. 扶養家族向けの医療費手当 (PHP250/月)
 3. お米手当 (PHP2,000/月または50kg)
 4. 制服・衣服手当 (PHP6,000/年)
 5. 医療費実費負担 (PHP10,000/年)
 6. 洗濯手当 (PHP300/月)
 7. 表彰記念品(年PHP10,000までの記念品(現金は不可))
 8. クリスマスや記念品のギフト(PHP5,000/年)
 9. 残業食事手当 (各地域の最低賃金の25%)
 10. 団体交渉協約(CBA)・Productivity Incentive Schemesによる報酬 (PHP10,000/年)

 

3.個人所得税に係る納税義務

 日本と同様に、会社は従業員の給与等に係る所得税を源泉徴収し、毎月翌月10日までに税務当局に申告・納付する義務があります。
更に、年度末には年末調整を実施し、翌年1月31日までに従業員の申告書(BIR Form 1604CF)およびアルファリストを提出、1年分の源泉徴収票(BIR Form 2316)を従業員に配布・BIRに提出します。

 

 

 フィリピンにおいては、給与の支払いが月2回であり、年末には13ヶ月給与を支払う必要がある等、日本と異なる点が多々あります。また、給与計算のミスが思わぬトラブルに繋がるケースもあり、特に労働者保護の観点が強いフィリピンにおいては十分に配慮すべき点です。

 弊社では、日系企業様が安心して事業に専念するために、給与計算や税務申告のサポートも行っております。まずはお気軽にお問い合わせフォームまでご相談ください。

 

 

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投稿者プロフィール

Kazuki Hibino
Kazuki Hibino
独立系コンサルティングファームにて、M&A事業部、内部監査室を経て、2015年にフィリピン赴任。その後、外資系コンサルティングファームに転職し、主に国内上場企業のM&AにおけるFA業務を経験。2023年にフィリピンにて独立。