【2026年9月最新】フィリピン最低賃金ガイド|NCR(マニラ)賃金命令の混乱と地域別最新レート

フィリピンの最低賃金は全国一律ではなく、地域ごとの賃金委員会が発行する賃金命令(Wage Order)によって定められています。2026年はマニラ首都圏(NCR)で大きな動きがあり、当初決定していた大幅な引き上げが裁判所の差止めで止まったうえで、あらためて別の賃金命令(NCR-28)により日額755ペソへの引き上げが実施されるという異例の展開となりました。本記事では、この最新の動き、地域別の最低賃金、過去からの推移、日系企業が確認すべき実務ポイントを整理します。

この記事の要点

  • マニラ首都圏(NCR)の非農業の最低賃金は、2026年9月26日に発効した賃金命令NCR-28により日額695ペソから755ペソへ(農業・小規模事業者は718ペソ)
  • 当初の賃金命令NCR-27(日額85ペソの2段階引き上げ)は、裁判所の差止めにより実施が止まっている
  • 地域別では、NCRが755ペソ、中部ルソン・カラバルソンが600ペソで上位。セブを含む中部ビサヤは540ペソで、2026年10月14日から582ペソへ引き上げ予定
  • 賃金の歪み(上位等級との賃金差)、13か月給与、残業・休日手当など、基本給の引き上げは複数の給与項目に波及する
  • 拠点ごとに適用される地域・区分が異なるため、マニラ・セブ・クラークなど拠点別に確認する

最終更新日:2026年10月1日。賃金命令の内容は公開情報に基づく整理であり、裁判所の判断や新たな賃金命令に応じて随時更新します。

フィリピンの人件費を含む費用の考え方については、「記帳代行・税務顧問の費用相場」もあわせてご参照ください。

目次

【最新】NCR(マニラ首都圏)の最低賃金をめぐる混乱

2026年、NCRの最低賃金をめぐっては、次のような経緯をたどりました。日系企業にとっても「結局、今の最低賃金はいくらなのか」を正確に把握しておくことが重要です。

時期 できごと
2026年6月 NCR地域賃金生産性委員会(RTWPB-NCR)が賃金命令NCR-27を発出。日額85ペソの引き上げを2段階で実施(第1段階:非農業695ペソ→755ペソ、第2段階:2027年1月に780ペソ)。7月9日に公告
2026年7月25日 NCR-27の第1段階(695ペソ→755ペソ)が発効
2026年7月30日 建設関連企業2社の申立てを受け、パシッグ地方裁判所がNCR-27の実施を一時停止する仮処分命令(TRO)を発令
2026年8月13日 TROの期限切れに伴い、予備的差止命令に移行。差止めが継続し、旧賃金命令の695ペソが適用される状態に(8月26日時点で最高裁が係争を審理中と報じられている)
2026年9月 RTWPB-NCRが、NCR-27とは別の新たな賃金命令NCR-28を発出。日額60ペソの引き上げ(非農業:695ペソ→755ペソ/農業・小規模小売サービス業・小規模製造業:658ペソ→718ペソ)
2026年9月26日 NCR-28が発効。約110万人の最低賃金労働者が対象と報じられている

NCR-28の日額60ペソは、差止め中のNCR-27の第1段階とほぼ同じ水準で、係争が続いていても労働者の賃金を引き上げることを目的とした措置と説明されています。2027年1月に予定されていたNCR-27の第2段階(780ペソ)は、係争の結果次第で扱いが変わる可能性があるため、今後の裁判所の判断や新たな賃金命令の動向を継続して確認する必要があります。

地域別の最低賃金(非農業・2026年9月時点)

主な地域の非農業の最低賃金(日額)は次のとおりです。地域内でも、市・自治体の区分や事業の規模・業種によって異なる料率が定められている場合があり、表の金額は各地域で最も高い区分の目安です。

地域 日額(ペソ) 主な都市・備考
NCR(マニラ首都圏) 755 マニラ、マカティ、BGC。NCR-28(2026年9月26日発効)
第3地域(中部ルソン) 600 クラーク、アンヘレス、スービック
第4A地域(カラバルソン) 600 ラグナ、カビテ、バタンガス
第6地域(西ビサヤ) 550 イロイロ、バコロド
第7地域(中部ビサヤ) 540 セブ、ラプラプ。2026年10月14日から582ペソへ引き上げ予定
第11地域(ダバオ) 540 ダバオ市
CAR(コルディレラ) 505 バギオ
第1地域(イロコス) 505 ラオアグ、ダグパン
第2地域(カガヤンバレー) 500 トゥゲガラオ
第10地域(北ミンダナオ) 500 カガヤン・デ・オロ
第13地域(カラガ) 475 ブトゥアン
第8地域(東ビサヤ) 470 タクロバン
第9地域(サンボアンガ半島) 464 サンボアンガ
第12地域(ソクサージェン) 460 ジェネラル・サントス
第5地域(ビコール) 455 レガスピ
第4B地域(ミマロパ) 455 プエルト・プリンセサ
BARMM 436 コタバト

中部ビサヤ(セブ)の2026年の改定内容は「【最新】セブの最低賃金は日額582ペソに」で詳しく解説しています。

NCRの最低賃金の推移

時期 賃金命令 非農業の日額
2024年7月 NCR-25 645ペソ
2025年7月 NCR-26 695ペソ
2026年9月26日 NCR-28 755ペソ

約2年で110ペソ(約17%)上昇しており、毎年の引き上げ幅が拡大しています。月26日勤務で換算すると、755ペソは月額約19,630ペソに相当します。

日系企業が確認すべき実務ポイント

1. 拠点ごとに適用される地域・区分を確認する

マニラ、セブ、クラークなど複数の拠点がある場合、拠点の所在地ごとに適用される賃金命令が異なります。同じ地域でも、市・自治体の区分や事業規模により料率が異なる場合があるため、所在地の自治体がどの区分に該当するかを確認します。

2. 最低賃金を下回る従業員がいないか

日給制だけでなく、月給制の従業員も、日額に換算して最低賃金を満たしているか確認します。NCRでは、差止め中のNCR-27ではなくNCR-28が現在の根拠になっている点に注意が必要です。

3. 上位等級の賃金差(賃金の歪み)の調整

最低賃金の引き上げにより、新入社員と経験者の賃金差が縮まったり逆転したりする「賃金の歪み(wage distortion)」が生じる場合があります。最低賃金近辺の従業員だけでなく、上位の等級の賃金テーブルも確認しておく必要があります。

4. 13か月給与・残業代・手当・社会保険料への波及

13か月給与は年間の基本給をもとに計算され、残業代・休日手当・夜間手当も基本給に連動します。さらに、SSS・PhilHealth・Pag-IBIGの事業主負担も給与額に応じて増加します。人件費の全体像は「記帳代行・税務顧問の費用相場」の人件費試算が参考になります。

5. 委託先の契約単価と適用免除

警備・清掃・派遣など、委託先の人件費が最低賃金に連動する契約は、価格調整の条項と更新時期を確認します。また、賃金命令には小規模事業者などを対象とした適用免除の仕組みがあるのが通例ですので、要件と申請期間を賃金命令と地域賃金委員会の案内で確認してください。

よくある質問

現在のマニラ首都圏の最低賃金はいくらですか?

非農業は日額755ペソです。2026年9月26日に発効した賃金命令NCR-28に基づきます。農業・小規模な小売サービス業・小規模製造業は718ペソです。

NCR-27は無効になったのですか?

NCR-27は裁判所の差止めにより実施が止まっていますが、係争が続いている状況で、最終的な判断は確定していません。今後の動向を確認する必要があります。

最低賃金は毎年改定されますか?

地域賃金委員会が賃金命令を発行するたびに改定されます。近年は多くの地域で、毎年または年に1回程度の改定が続いています。

PEZA登録企業や外資系企業にも適用されますか?

はい。各地域の民間部門の最低賃金労働者であれば、企業の形態や出資者の国籍にかかわらず適用されます。

最低賃金を下回って支払うとどうなりますか?

労働雇用省(DOLE)の検査により、不足分の支払いを求められる可能性があります。賃金命令の施行日に合わせて、給与計算の設定を見直しておくことが重要です。

まとめ・専門家への相談

フィリピンの最低賃金は、地域ごとの賃金命令で決まり、2026年はNCRで差止めと再発出という異例の展開となりました。現在の適用額(NCRは755ペソ)を拠点ごとに確認し、賃金テーブルの歪み、13か月給与や手当、社会保険料への影響を見直しておくことをおすすめします。カメリアコンサルティングでは、フィリピン全土の日系企業を対象に、給与計算・人件費の試算・賃金制度の見直しのご相談を承っています。まずは「お問い合わせ」からお気軽にご連絡ください。

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出典:NWPC・RTWPB公開の賃金命令、DOLE・各報道および各種賃金一覧(2026年9月)

執筆・監修:日比野和樹

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