【2026年最新】フィリピンの会計実務完全ガイド|会計基準・記帳・決算から日本本社への報告まで

フィリピンに進出した日系企業から、会計・経理の実務について「日本と勝手が違いすぎて戸惑う」というご相談を数多くいただきます。フィリピンの会計は、国際財務報告基準(IFRS)をベースとしたPFRS(Philippine Financial Reporting Standards)に準拠しており、会計帳簿の様式、決算・監査の要否、SECおよびBIRへの提出物とその期限など、日本の実務とは異なる点が数多くあります。

本記事では、フィリピンで会社を運営する日系企業の経理担当者・経営者が最低限押さえておくべき会計実務の全体像を、会計基準、記帳、決算・監査、税務申告との関係、日本本社への報告までまとめて解説します。

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この記事の要点

  • フィリピンの会計基準はIFRSベースのPFRS/PASで、企業規模により適用区分が異なる
  • 会計帳簿(Books of Account)はManual・Loose-Leaf・CAS(電子会計システム)の3種類
  • 一定規模以上の法人は外部監査人によるAudited Financial Statements(AFS)の作成が必要
  • AFS・GISはSECへ、法人所得税申告書は監査済みAFSを添付してBIRへ提出する
  • 日本本社への月次報告では、PFRSとJ-GAAPの科目対応・為替換算の整理が実務上の負担になりやすい
目次

フィリピンの会計基準(PFRS/PAS)

フィリピンの会計基準は、証券取引委員会(SEC:Securities and Exchange Commission)が採用するPFRS(Philippine Financial Reporting Standards)およびPAS(Philippine Accounting Standards)です。いずれも国際会計基準審議会(IASB)が定めるIFRS・IASを、フィリピン国内向けにほぼそのまま採用したものであり、実務上はIFRSとほぼ同一と考えて差し支えありません。

Revised SRC Rule 68に基づき、適用される基準は総資産・総負債の規模により以下の4区分に分かれます。

区分 総資産/総負債の目安 主な対象
Full PFRS 総資産3.5億ペソ超 または 総負債2.5億ペソ超 公開企業、金融機関、大企業など公共性の高い法人
PFRS for SMEs 総資産1億〜3.5億ペソ または 総負債1億〜2.5億ペソ 中堅企業。日系子会社の一部がこの区分に該当
PFRS for Small Entities 総資産300万〜1億ペソ または 総負債300万〜1億ペソ 中小企業。日系子会社の多くがこの区分に該当(SEC Memorandum Circular No. 5, Series of 2018で導入)
Micro企業(簡易基準) 総資産・総負債とも300万ペソ以下 小規模法人。所得税基準または簡易様式のPFRS for Small Entitiesを使用可能

※ 上記は総資産・総負債いずれかが該当すれば区分される目安であり、公共性(Public Accountability)の有無等、他の判定要素もあります。正確な区分判定は決算前に専門家にご確認ください。

日本の会計基準(J-GAAP)との代表的な相違点としては、13ヶ月目給与(13th Month Pay)や有給休暇引当金の計上、リース会計(PFRS 16)の取扱い、外貨建取引・換算の処理などが挙げられます。日本本社と連結する際は、これらの差異を勘定科目対応表としてあらかじめ整理しておくと、月次・年次の報告作業がスムーズになります。

会計年度(Fiscal Year)の考え方

フィリピンでは暦年(1月〜12月、Calendar Year)を会計年度とするのが原則ですが、BIRの承認を得ることで会計年度(Fiscal Year)を任意の12ヶ月に設定することも可能です。日系子会社の場合、日本本社の決算期に合わせてFiscal Yearを採用するケースと、フィリピンでの実務上の簡便さを優先してCalendar Yearを採用するケースの両方が見られます。なお、会計年度を変更する場合は、事前にBIRへの届出が必要です。

会計帳簿(Books of Account)と記帳

フィリピンで事業を行う法人は、BIRに登録した会計帳簿(Books of Account)を備え付ける義務があります。会計帳簿には主に以下の3種類があり、事業規模や取引量に応じて選択します。

  • Manual Books:紙の帳簿に手書きで記帳する方式。小規模事業者向け。
  • Loose-Leaf Books:表計算ソフト等で作成した帳簿を、期限までに製本・登録する方式。
  • CAS(Computerized Accounting System):会計システムで記帳・保存する方式。多くの日系企業がこの方式を採用しています。

従来、CASの利用にはBIRのPTU(Permit To Use)取得が必要でしたが、制度改正によりPTUは廃止され、現在はAcknowledgement Certificate(受領証)の取得方式に移行しています。CAS・EIS(Electronic Invoicing/Receipting System)の申請実務については、CAS・EISに関する記事で詳しく解説しています。

決算・外部監査とSECへの提出(AFS・GIS)

2026年1月22日発出のSEC Memorandum Circular No. 4, Series of 2026(2025年11月18日財務省承認、2025年12月31日以降を末日とする事業年度から適用)により、監査を免除される基準額が従来の総資産・総負債60万ペソ以下から300万ペソ以下に引き上げられました。現在は、株式会社・非株式会社を問わず総資産または総負債が300万ペソを超える法人は、独立した外部監査人(Independent CPA)による監査を受けたAudited Financial Statements(AFS:監査済み財務諸表)の作成が義務付けられています。300万ペソ以下の法人(Micro企業)は、宣誓の上でのStatement of Management’s Responsibility(経営者責任表明書)を添付した無監査の財務諸表で足りる場合があります。なお、外国法人のフィリピン支店・駐在員事務所は割当資本金100万ペソ以上、地域事業統括本部(ROHQ)は総収入100万ペソ以上で監査対象となります(SEC Memorandum Circular No. 9, Series of 2026)。また、2026年2月16日発出のSEC Memorandum Circular No. 10, Series of 2026により、One Person Corporation(OPC)にも同じ300万ペソの基準が適用されています。多くの日系子会社はいずれかの基準に該当するため、決算後、監査法人による監査を経てAFSを確定させる必要があります。

確定したAFSは、General Information Sheet(GIS:法人基本情報の年次報告書)とあわせて、SECのオンラインシステムeFAST(Electronic Filing and Submission Tool)を通じて提出します。SEC Memorandum Circular No. 9, Series of 2026により、eFASTでの提出が原則必須となり、メール・郵送・窓口持参での提出は認められなくなりました。提出期限の目安は以下のとおりです。

  • 決算日が12月31日の法人のAFS:2026年は2026年5月29日まで(毎年SECが公表する提出スケジュールに従う)
  • 12月31日以外を決算日とする法人のAFS:決算日から120日以内(SRC登録企業は105日以内)
  • GIS:年次株主総会・社員総会またはSECライセンス取得日の応当日から30日以内

提出期限を過ぎた場合は5,000ペソから45,000ペソ程度の基本科料に加え、月次の加算料金が発生するため注意が必要です。年によって延長措置が取られることもあるため、最新の期限は毎年確認をおすすめします。具体的な提出様式についてはAFS・GIS提出期限に関する記事をご覧ください。

また、監査済みAFSはBIRへの年次法人所得税確定申告(BIR Form 1702)にも添付が必要であり、SECとBIR双方の期限を意識したスケジュール管理が求められます。

税務申告カレンダーとの関係

会計実務は、月次・四半期・年次の税務申告と密接に連動します。主な申告の流れは以下のとおりです。

頻度 主な申告・提出物
月次 源泉税の申告・納付(BIR Form 0619E等)
四半期 VAT申告(2550Q)、源泉税四半期申告(1601EQ)、法人税予定申告(1702Q)
年次 法人所得税確定申告(1702)、AFS・GISの提出

2024年施行のEOPT(Ease of Paying Taxes)法により、VAT申告の頻度など一部の実務が変更されています。最新の制度変更についてはEOPT法に関する記事で解説していますので、あわせてご確認ください。また、源泉徴収票(BIR Form 2316)の年次発行実務についてはBIR Form 2316に関する記事をご参照ください。

日本本社への報告における実務上の留意点

日系子会社では、現地での決算・申告に加えて、日本本社向けの月次試算表や連結パッケージの提出が求められるケースが一般的です。実務上つまずきやすいポイントとして、以下が挙げられます。

  • PFRSとJ-GAAPの勘定科目対応表を事前に整備し、毎月の組み替え作業を標準化する
  • ペソ建て取引の円換算方法(期中平均レート・期末レート等)を親会社側の連結方針と揃える
  • 本社との取引(経営指導料、ロイヤルティ、本支店間取引等)に関する源泉税・移転価格上の取扱いを事前に確認する(日比租税条約の適用に関する記事も参照)
  • 現地スタッフの異動・退職時にも数値の継続性が保てるよう、経理マニュアルを整備しておく

よくある会計トラブルの傾向

フィリピンでの会計実務では、記帳の遅延や証憑(オフィシャルレシート等)の不備、担当者の退職に伴う引き継ぎ不足など、日本ではあまり想定しないトラブルが発生しがちです。実際にご相談いただいた事例の傾向はフィリピンの会計トラブル事例(初級編)で紹介していますので、自社の体制点検にお役立てください。

自社経理か、アウトソーシングか

フィリピンでは会計・経理の有資格者(CPA)の採用競争が激しく、特に日本語対応が可能な人材の確保は容易ではありません。自社での経理体制構築が難しい場合、記帳代行や会計顧問サービスを部分的・全面的に活用する日系企業が多く見られます。選定にあたっては、対応可能な業務範囲(記帳のみか、申告書作成・SEC提出まで含むか)、日本語での報告可否、担当者の資格・経験を確認するとよいでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q1.フィリピンの会計年度はいつからいつまでですか?

A.原則は暦年(1月〜12月)です。BIRの承認を得れば任意の12ヶ月をFiscal Yearとして設定することもでき、日本本社の決算期に合わせて設定する日系子会社もあります。

Q2.会計帳簿は何を用意すればよいですか?

A.Manual Books、Loose-Leaf Books、CAS(電子会計システム)のいずれかをBIRに登録する必要があります。取引量が多い企業では、記帳の効率性からCASを採用するケースが一般的です。

Q3.外部監査(会計監査)は必ず必要ですか?

A.2026年1月のSEC Memorandum Circular No. 4, Series of 2026により、総資産または総負債が300万ペソを超える法人は、独立監査人によるAudited Financial Statements(AFS)の作成が義務付けられています(従来の基準額は60万ペソでした)。300万ペソ以下のMicro企業は、宣誓の上でのStatement of Management’s Responsibilityを添付した無監査の財務諸表で足りる場合があります。基準額に近い規模の企業は、決算前に該当有無を確認しておくことをおすすめします。

Q4.日本本社への月次報告はどのように進めればよいですか?

A.PFRSとJ-GAAPの勘定科目対応表をあらかじめ整備し、為替換算方法を親会社の連結方針と統一しておくと、毎月の作業負担を抑えられます。

Q5.会計・記帳は自社で行うべきですか、それとも外注すべきですか?

A.有資格者の採用状況や取引量、日本語報告の要否によって最適な選択は異なります。自社採用が難しい場合は、業務範囲を区切ってアウトソーシングを併用する方法も有効です。

フィリピンの会計実務は、会計基準・記帳方式・決算/監査・税務申告が相互に関連しており、それぞれを個別に対応するのではなく、年間を通じたスケジュールとして管理することが重要です。自社での対応に不安がある場合は、記帳代行から日本本社向けレポーティングまで一貫してサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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