【2026年最新】CREATE MORE法(RA 12066)で優遇税制はこう変わった|EDR20%・電力費追加控除・RBELT2%とPEZA企業の実務対応

CREATE MORE法(RA 12066、2024年11月11日署名・11月28日発効)は、PEZA・BOI登録企業(RBE)向けの優遇税制を大幅に拡充する改正法です。登録企業は「拡張控除制度(EDR)」を選べば法人税率が25%から20%に下がり、電力費・研究開発費などに追加控除が上乗せされます。さらに所得税休暇(ITH)の期間延長、地方税・手数料を総所得の2%以下に収めるRBELT、VATゼロレート適用の明確化なども盛り込まれており、既存のPEZA・BOI登録企業にとっても新規進出企業にとっても、優遇税制の設計を見直す価値がある改正です。本記事では制度の全体像と、日系企業が実務上押さえるべきポイントを整理します。

この記事の要点

  • CREATE MORE法により、登録輸出型企業(REE)は「拡張控除制度(EDR)」と「5%特別法人税(SCIT)」のいずれかを選択でき(併用不可、選択後は変更不可)、国内市場向け企業(DME)はEDRのみ
  • EDRを選択した場合の法人税率は25%から20%に軽減(RR 7-2025)され、電力費(100%)・研究開発費(100%)・国内投入費用(50%)等に追加控除(Enhanced Deductions)が上乗せされる
  • 所得税休暇(ITH)の付与期間は立地・活動ティアにより4〜7年。ITH終了後のEDR/SCITと合わせた優遇期間は、IPA承認案件で14〜17年、FIRB承認案件で24〜27年
  • RBELT(登録企業地方税)はITH・EDR期間中の登録企業に、地方自治体が総所得(Gross Income)の2%を上限として課す(SCIT期間中は対象外)
  • VATゼロレート・免税の適用範囲が明確化され、国内購入のゼロレートは登録輸出型企業(REE)と高付加価値DMEが対象(登録事業に「直接帰属」する物品・サービスに限る)
  • 投資額150億ペソ以上の大型プロジェクトはFIRB承認が必須(FIRB Resolution 003-24)、在宅勤務(WFH)は総労働力の50%まで(BOI登録企業は最大100%)。エネルギー非常事態の間は、エコゾーン・フリーポート登録企業に最大90%の特例

最終更新日:2026年10月。DOF・BIR・FIRBの実施細則は今後も追加発出が見込まれるため、随時更新します。

フィリピンの税制優遇の全体像については「フィリピンの税務完全ガイド」もあわせてご参照ください。

目次

CREATE MORE法とは:CREATE法(2021年)からの主な変更点

CREATE MORE法(Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises to Maximize Opportunities for Reinvigorating the Economy Act、RA 12066)は、2021年施行のCREATE法(RA 11534)が抱えていた「優遇制度が複雑で使いにくい」「VATゼロレートの適用範囲が不明確」といった実務上の課題を解消するための改正法として、2024年11月11日に成立し、11月28日に発効しました。既存のPEZA・BOI登録企業(RBE)にも新規登録企業にも適用され、選択制の優遇税制メニュー、ITH期間の拡大、地方税の一本化、VATルールの明確化という4つの柱で構成されています。旧CREATE法下で登録した企業も、一定の条件下でCREATE MOREの新メニューへの移行(トランジション)を選択できる仕組みが用意されています。

優遇税制の二本立て:EDR vs 5%特別法人税(SCIT)

CREATE MORE法の核心は、ITH期間終了後(または最初から)に選べる2つの優遇税制メニューです。ただし5%SCITを選べるのは登録輸出型企業(REE)だけで、国内市場向け企業(DME)と高付加価値DMEはEDRのみです。「拡張控除制度(Enhanced Deductions Regime、EDR)」は、通常の法人税(CIT)の課税ベースに追加控除を適用したうえで、軽減された税率(後述の20%)を課す仕組みです。もう一方の「5%特別法人税(Special Corporate Income Tax、SCIT)」は、法人税・地方税を含むほぼすべての国税・地方税に代えて、総所得(Gross Income)に対して一律5%を課す仕組み(中央政府3%、所在地の地方自治体2%)で、旧CREATE法下から存在する制度です。両者は選択制で併用できず、一度選択したインセンティブは優遇期間を通じて変更できません。登録輸出型企業(REE)は自社の費用構造(電力費・人件費・国内調達費の割合が大きいか、シンプルな低コスト構造か)に応じてどちらが有利かを判断する必要があります。一般的に、電力費や研究開発費など追加控除の対象となる費用が大きい製造業・BPO企業ではEDRが有利になりやすく、費用構造がシンプルでコンプライアンス負担を抑えたい企業では5%SCITが選好される傾向があります。

項目 EDR(拡張控除制度) 5%特別法人税(SCIT)
課税ベース 通常の法人課税所得(追加控除を適用後) 総所得(Gross Income Earned)
適用税率 20%(RR 7-2025) 5%(国税・地方税の代替)
追加控除 電力費・研究開発費・国内調達費・労務費等に上乗せ控除あり 控除の概念自体が適用されない(総所得課税のため)
地方税 RBELT:総所得の2%が上限 RBELT対象外(SCITが国税・地方税・手数料に代わる)
向いている企業像 電力費・R&D費・国内調達費の比重が大きい製造業・大規模BPO等 費用構造がシンプルでコンプライアンス負担を抑えたい企業

EDRの拡張控除メニューと20%法人税率(RR 7-2025)

EDR適用RBEの法人税率は、RR 7-2025により25%から20%に軽減されます(2024年11月28日発効)。これに加えて、通常の損金算入項目に上乗せする形で以下のような追加控除(Enhanced Deductions)が認められます:建物の減価償却費に追加10%、機械設備の減価償却費に追加20%、労務費に50%(間接部門のコストは除く)、研究開発費とフィリピン人従業員の訓練費(IPA承認が必要)に100%、電力費に100%、国内投入費用(Domestic Input Expense)に50%、展示会・見本市費用に50%(IPA承認が必要)の追加控除、などです。実際にどの控除項目がどの割合で適用されるかは、登録証(Certificate of Registration)に記載された個別の優遇内容とIPA(PEZA・BOI等)の認定次第で変わるため、自社の登録証の記載内容を確認する必要があります。なお、追加控除はあくまで課税所得を圧縮する仕組みであり、赤字企業や控除対象費用の比重が小さい企業では恩恵が限定的になる点にも留意が必要です。

所得税休暇(ITH)の拡大:立地・活動ティア別の付与期間

CREATE MORE法・2026年版SIPP(戦略的投資優先計画)の下では、ITHの付与期間が立地(NCR/NCR近郊の都市圏/その他地域)と活動のティア(Tier I〜III、事業活動の付加価値・戦略性による分類)の組み合わせで決まります。同じ活動内容でも、NCR外に立地するほど長いITH期間が付与される設計になっており、地方分散を促す政策意図が反映されています。

活動ティア NCR NCR近郊都市圏 その他地域
Tier I(基礎的・持続性重視) 4年 5年 6年
Tier II(サプライチェーン強靭化) 5年 6年 7年
Tier III(イノベーション主導) 6年 7年 7年

さらに、NCRから地方へ完全に移転する企業には追加で3年、災害・紛争からの復興地域(大統領宣言などの要件あり)に立地する企業には追加で2年のITHが認められる規定もあります。ITH終了後はEDRまたは5%SCIT(SCITはREEのみ)のいずれかに移行し、ITHとEDR/SCITを通算した優遇期間は、IPA承認案件で14〜17年、FIRB承認案件で24〜27年です(上の表はIPA承認案件のITH期間です)。自社がどのティア・立地区分に該当するかは、登録申請時にIPAへ確認するのが確実です。

RBELT:地方税・手数料を総所得の2%以下に

CREATE MORE法は、ITH期間中およびEDR期間中の登録企業に対し、地方自治体(LGU)が条例により、総所得(Gross Income)の2%を超えない税率で「登録企業地方税(RBELT)」を課す仕組みを新設しました。地方税に加えてLGUの手数料(Local Fees and Charges)もRBELTでカバーされるため、地方税負担が簡素化されます(複数のLGUが管轄する場合も、合計は総所得の2%を超えません)。一方、SCITを選択した登録輸出型企業(REE)は、SCITが国税と地方税・手数料のすべてに代わるため、RBELTの対象外です。地方税・Mayor’s Permit更新の実務全般については「地方税・Mayor’s Permit更新の実務」もあわせてご参照ください。

VATゼロレート・免税の適用拡大(High-Value DME)

旧CREATE法下では、登録事業に「直接かつ専ら使用される(directly and exclusively used)」物品・サービスに限定してVATゼロレート・免税が適用されていましたが、その解釈を巡って現場の混乱が続いていました。CREATE MORE法とそのIRRは、基準を登録事業に「直接帰属する(directly attributable)」物品・サービスに改め、清掃、警備、金融、コンサルティング、マーケティング、管理業務(人事・法務・会計を含む)など、登録事業に付随して合理的に必要なものも含めました。何が直接帰属するかは、関連するIPAが判断します。国内購入のVATゼロレートは、登録輸出型企業(REE)と高付加価値DMEが対象です(高付加価値DMEは、投下資本が150億ペソ超で輸入代替分野に従事する企業、または前年の輸出売上が1億米ドル以上の企業)。REEは、前年の年間総生産の70%以上を輸出していることが要件で、この比率を下回るとVAT優遇の対象外となるリスクがあるため、輸出比率の継続的なモニタリングが実務上重要になります。なお、VATゼロレート証明書は毎年IPAに申請する必要があります。仕入先から12%のVATを転嫁された場合、その分は還付・クレジットの対象にならないため、仕入先と調整して売上請求書を修正する必要があります。免税で輸入した設備・原材料を売却・廃棄するときのルール(5年以内のIPAの事前承認など)は「免税輸入品の売却・廃棄|5年ルールと関税・VATの注意点」で解説しています。PEZA企業のVAT実務全般については「PEZA企業の国内販売とVATの買主納付制度」もあわせてご参照ください。

大型プロジェクトのFIRB承認(150億ペソ基準)

投資額が150億ペソ以上の大型プロジェクトについては、個別のIPA(PEZA・BOI等)の認定だけでなく、財政インセンティブ審査会(Fiscal Incentives Review Board、FIRB)の承認が必須とされています(FIRB Resolution No. 003-24)。これは、大規模な税制優遇の付与を政府レベルで一元的に審査・管理する趣旨によるもので、該当規模の投資を計画する企業は、IPAへの登録申請と並行してFIRB審査のスケジュールも考慮した投資計画を立てる必要があります。日系企業の多くはこの閾値を下回る投資規模であることが多いですが、大規模な製造拠点・データセンター等を計画する場合は該当し得るため、事前に確認しておくべきポイントです。

在宅勤務(WFH)の許容拡大

コロナ禍以降、PEZA登録企業(特にBPO・ITエンタープライズ)では在宅勤務(Work-From-Home、WFH)の扱いが優遇税制の適用条件との関係で度々議論の対象となってきました(PEZA登録事業所は原則としてエコゾーン内での業務遂行が要件のため)。CREATE MORE法では、在宅勤務法(RA 11165)に基づくWFHプログラムを、登録証のインセンティブに影響を与えない範囲で、総労働力(登録事業に従事する従業員)の50%まで実施できると定めています。BOI登録企業は、IRRにより最大100%のWFHが認められます。また、2026年3月24日の国家エネルギー非常事態宣言を受け、FIRB決議005-26により、エコゾーン・フリーポートを管轄するIPA(PEZA等)の登録企業は、非常事態宣言が解除されるまで最大90%までWFHが可能になりました(IPAの裁量で上限を引き下げられますが、50%を下回りません)。この特例を使うには、持ち出す機器の一覧と保証証券(Surety Bond)の写しをIPAに提出し、追加で持ち出した資産を月末後5日以内に報告する必要があります。IPAの上限を超えた分には、通常の法人所得税相当額のペナルティが課されます。具体的な運用はIPAごとに異なるため、自社の登録IPAの最新方針を確認してください。

選択の変更不可と証憑管理:実務上の注意点

実務上特に注意すべき点が2つあります。第一に、EDRまたはSCITを一度選択すると、優遇税制の適用期間を通じて変更できません(CREATE MORE IRR Rule 3, Sec. 3)。頻繁な切替えを想定した制度ではないため、登録申請前の段階で、どちらが自社の費用構造に適しているかをシミュレーションしておくことが重要です。第二に、追加控除の適用を受けるには、通常の会計帳簿とは別に、控除項目ごとの根拠資料(電力費であれば電力会社発行の請求書、研究開発費であれば費目別の記録等)を整備しておく必要があります。追加控除の条件と、証憑・報告(NCSR)の要件は、DOF DO 026-2026(RMC 105-2026)で定められました(「EDRの適用条件|DO 026-2026」)。

よくある質問

EDRと5%SCIT、どちらを選ぶべきですか?

電力費・研究開発費・国内調達費・労務費など追加控除の対象となる費用の比重が大きい製造業・大規模BPO企業ではEDRが有利になりやすい一方、費用構造がシンプルでコンプライアンス負担を抑えたい企業では5%SCITが選好される傾向があります。自社の損益構造をもとに両者の実効負担を試算して判断することをおすすめします。

既存のCREATE法下で登録した企業も新しい制度に移行できますか?

一定の条件下で、旧CREATE法下の登録企業がCREATE MOREの新メニュー(EDR等)へ移行する仕組みが用意されています。移行の可否・手続きは登録済みのIPA(PEZA・BOI等)への確認が必要です。

ITHとEDR/SCITは両方受けられますか?

はい。多くの登録企業はまずITH(所得税休暇)の期間を受け、その終了後にEDRまたは5%SCITのいずれかに移行する設計になっています。ITHとEDR/SCITを通算した優遇期間は、IPA承認案件で14〜17年、FIRB承認案件で24〜27年です。

RBELTはすべての登録企業が対象ですか?

ITH期間中・EDR期間中の登録企業が対象で、税率は総所得の2%が上限です。SCITを選択した登録輸出型企業は、SCITが地方税・手数料にも代わるため、RBELTの対象外となります。

輸出比率70%要件を下回った場合はどうなりますか?

VATゼロレート・免税の適用対象から外れるリスクがあります。輸出企業として優遇を受け続けるには、前年の年間総生産に占める輸出の比率を継続的にモニタリングし、70%以上を維持する必要があります。

まとめ・専門家への相談

CREATE MORE法は、既存のPEZA・BOI登録企業にとっては優遇メニューの見直し(EDRか5%SCITか)を検討する契機となり、新規進出を検討する企業にとっては立地選定・活動内容の設計段階から優遇の最大化を考慮できる制度です。ただし、追加控除の具体的な適用条件やITHの付与期間は登録証・IPAの認定内容によって個別に決まるため、自社のケースに即した試算と申請書類の準備が欠かせません。カメリアコンサルティングでは、PEZA・BOI登録の実務支援や、CREATE MORE法下での優遇メニュー選択のシミュレーションにも対応しています。

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執筆・監修:日比野和樹

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