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【2026年最新】CREATE MORE法(RA 12066)で優遇税制はこう変わった|EDR20%・電力費追加控除・RBELT2%とPEZA企業の実務対応
CREATE MORE法(RA 12066、2024年11月11日成立・即日施行)は、PEZA・BOI登録企業(RBE)向けの優遇税制を大幅に拡充する改正法です。登録企業は「拡張控除制度(EDR)」を選べば法人税率が25%から20%に下がり、電力費・研究開発費などに追加控除が上乗せされます。さらに所得税休暇(ITH)の期間延長、地方税を2%に一本化するRBELT、VATゼロレート適用の明確化なども盛り込まれており、既存のPEZA・BOI登録企業にとっても新規進出企業にとっても、優遇税制の設計を見直す価値がある改正です。本記事では制度の全体像と、日系企業が実務上押さえるべきポイントを整理します。
この記事の要点
- CREATE MORE法により、登録企業(RBE)は「拡張控除制度(EDR)」と「5%特別法人税(SCIT/GIE)」のいずれかを選択でき、両者は併用不可
- EDRを選択した場合の法人税率は25%から20%に軽減(RR 7-2025)され、電力費・研究開発費・国内調達費等に追加控除(Enhanced Deductions)が上乗せされる
- 所得税休暇(ITH)の付与期間は立地・活動ティアにより4〜7年、条件次第で延長規定もあり最大で二桁年の優遇期間になり得る
- 地方税はRBELT(登録事業地方税)として売上高の2%に一本化(EDR・ITH適用RBEが対象、5%GIE企業は対象外)
- VATゼロレート・免税の適用範囲が明確化され、高付加価値の直接輸出関連費用(High-Value DME)にも拡大
- 投資額150億ペソ以上の大型プロジェクトはFIRB承認が必須(FIRB Resolution 003-24)、在宅勤務(WFH)は登録事業活動の一定割合まで許容
最終更新日:2026年9月。DOF・BIR・FIRBの実施細則は今後も追加発出が見込まれるため、随時更新します。
フィリピンの税制優遇の全体像については「フィリピンの税務完全ガイド」もあわせてご参照ください。
CREATE MORE法とは:CREATE法(2021年)からの主な変更点
CREATE MORE法(Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises to Maximize Opportunities for Reinvigorating the Economy Act、RA 12066)は、2021年施行のCREATE法(RA 11534)が抱えていた「優遇制度が複雑で使いにくい」「VATゼロレートの適用範囲が不明確」といった実務上の課題を解消するための改正法として、2024年11月11日に成立・即日施行されました。既存のPEZA・BOI登録企業(RBE)にも新規登録企業にも適用され、選択制の優遇税制メニュー、ITH期間の拡大、地方税の一本化、VATルールの明確化という4つの柱で構成されています。旧CREATE法下で登録した企業も、一定の条件下でCREATE MOREの新メニューへの移行(トランジション)を選択できる仕組みが用意されています。
優遇税制の二本立て:EDR vs 5%特別法人税(SCIT/GIE)
CREATE MORE法の核心は、ITH期間終了後(または最初から)に選べる2つの優遇税制メニューです。「拡張控除制度(Enhanced Deductions Regime、EDR)」は、通常の法人税(CIT)の課税ベースに追加控除を適用したうえで、軽減された税率(後述の20%)を課す仕組みです。もう一方の「5%特別法人税(Special Corporate Income Tax/Gross Income Earned課税、SCIT・5%GIE)」は、法人税・地方税を含むほぼすべての国税・地方税に代えて、総所得(Gross Income Earned)に対して一律5%を課す仕組みで、旧CREATE法下から存在する制度です。両者は選択制で併用できず、登録企業は自社の費用構造(電力費・人件費・国内調達費の割合が大きいか、シンプルな低コスト構造か)に応じてどちらが有利かを判断する必要があります。一般的に、電力費や研究開発費など追加控除の対象となる費用が大きい製造業・BPO企業ではEDRが有利になりやすく、費用構造がシンプルでコンプライアンス負担を抑えたい企業では5%GIEが選好される傾向があります。
| 項目 | EDR(拡張控除制度) | 5%特別法人税(SCIT・GIE) |
|---|---|---|
| 課税ベース | 通常の法人課税所得(追加控除を適用後) | 総所得(Gross Income Earned) |
| 適用税率 | 20%(RR 7-2025) | 5%(国税・地方税の代替) |
| 追加控除 | 電力費・研究開発費・国内調達費・労務費等に上乗せ控除あり | 控除の概念自体が適用されない(総所得課税のため) |
| 地方税 | RBELT:売上高の2%に一本化 | 対象外(5%GIEに地方税相当分も包含) |
| 向いている企業像 | 電力費・R&D費・国内調達費の比重が大きい製造業・大規模BPO等 | 費用構造がシンプルでコンプライアンス負担を抑えたい企業 |
EDRの拡張控除メニューと20%法人税率(RR 7-2025)
EDR適用RBEの法人税率は、RR 7-2025により25%から20%に軽減されます(2024年11月28日発効)。これに加えて、通常の損金算入項目に上乗せする形で以下のような追加控除(Enhanced Deductions)が認められます:建物の減価償却費に追加10%、機械設備の減価償却費に追加20%、労務費(Labor Expense)に最大50%の追加控除(付与される優遇の内容による)、研究開発費・訓練費に100%の追加控除、電力費・国内調達費(Domestic Input)に50%の追加控除、などです。実際にどの控除項目がどの割合で適用されるかは、登録証(Certificate of Registration)に記載された個別の優遇内容とIPA(PEZA・BOI等)の認定次第で変わるため、自社の登録証の記載内容を確認する必要があります。なお、追加控除はあくまで課税所得を圧縮する仕組みであり、赤字企業や控除対象費用の比重が小さい企業では恩恵が限定的になる点にも留意が必要です。
所得税休暇(ITH)の拡大:立地・活動ティア別の付与期間
CREATE MORE法・2026年版SIPP(戦略的投資優先計画)の下では、ITHの付与期間が立地(NCR/NCR近郊の都市圏/その他地域)と活動のティア(Tier I〜III、事業活動の付加価値・戦略性による分類)の組み合わせで決まります。同じ活動内容でも、NCR外に立地するほど長いITH期間が付与される設計になっており、地方分散を促す政策意図が反映されています。
| 活動ティア | NCR | NCR近郊都市圏 | その他地域 |
|---|---|---|---|
| Tier I(基礎的・持続性重視) | 4年 | 5年 | 6年 |
| Tier II(サプライチェーン強靭化) | 5年 | 6年 | 7年 |
| Tier III(イノベーション主導) | 6年 | 7年 | 7年 |
さらに、NCRから地方へ移転する企業には追加で最大3年、災害・紛争からの復興地域に立地する企業には追加で最大2年のITHが認められる規定もあり、条件によってはITH単体で8年に達するケースもあります。ITH終了後はEDRまたは5%GIEのいずれかに移行し、優遇期間全体(ITH+EDR/GIE適用期間)を通算すると、活動内容・立地次第では10年超の優遇期間になる設計です。自社がどのティア・立地区分に該当するかは、登録申請時にIPAへ確認するのが確実です。
RBELT:地方税を売上高2%に一本化
CREATE MORE法は、ITH適用中またはEDR適用RBEを対象に、地方税(Local Business Tax等の複数税目)を「登録事業地方税(RBE Local Tax、RBELT)」として売上高の2%に一本化する規定を新設しました。これにより、地方自治体ごとに異なる税率・課税ベースで計算されていた地方税負担が簡素化されます。ただし、5%GIEを選択したRBEはRBELTの対象外です(5%GIEの中に地方税相当分が既に組み込まれているため)。地方税・Mayor’s Permit更新の実務全般については「地方税・Mayor’s Permit更新の実務」もあわせてご参照ください。
VATゼロレート・免税の適用拡大(High-Value DME)
旧CREATE法下では、輸出企業の直接的な生産活動に関連する費用(Direct and Exclusively Used、DME)に限定してVATゼロレート・免税が適用されていましたが、その解釈を巡って現場の混乱が続いていました。CREATE MORE法は、この「直接使用」要件の解釈を明確化するとともに、高付加価値の間接費用(High-Value DME、電力費・燃料費など事業運営上不可欠だが必ずしも生産工程に直接投入されない費用)についてもVATゼロレート・免税の適用対象に含める形で範囲を拡大しました。あわせて、輸出企業の要件として総売上高に占める輸出売上高の比率が70%以上であることが明記されており、この比率を下回るとVAT優遇の対象外となるリスクがあるため、輸出比率の継続的なモニタリングが実務上重要になります。PEZA企業のVAT実務全般については「PEZA企業の国内販売とVATの買主納付制度」もあわせてご参照ください。
大型プロジェクトのFIRB承認(150億ペソ基準)
投資額が150億ペソ以上の大型プロジェクトについては、個別のIPA(PEZA・BOI等)の認定だけでなく、財政インセンティブ審査会(Fiscal Incentives Review Board、FIRB)の承認が必須とされています(FIRB Resolution No. 003-24)。これは、大規模な税制優遇の付与を政府レベルで一元的に審査・管理する趣旨によるもので、該当規模の投資を計画する企業は、IPAへの登録申請と並行してFIRB審査のスケジュールも考慮した投資計画を立てる必要があります。日系企業の多くはこの閾値を下回る投資規模であることが多いですが、大規模な製造拠点・データセンター等を計画する場合は該当し得るため、事前に確認しておくべきポイントです。
在宅勤務(WFH)の許容拡大
コロナ禍以降、PEZA登録企業(特にBPO・ITエンタープライズ)では在宅勤務(Work-From-Home、WFH)の扱いが優遇税制の適用条件との関係で度々議論の対象となってきました(PEZA登録事業所は原則としてエコゾーン内での業務遂行が要件のため)。CREATE MORE法では、登録事業活動の一定割合(労働力の最大50%を目安とする運用)までWFHを認める規定が盛り込まれ、優遇税制の適用を維持したままハイブリッドワークを実施できる余地が明確化されました。ただし具体的な上限比率・条件はIPAごとのガイドラインによって運用が異なる場合があるため、自社の登録IPA(PEZA・BOI等)の最新方針を確認することをおすすめします。
DOF Department Order No. 026-2026:実務上の注意点
2026年に入り、財務省(DOF)はDepartment Order No. 026-2026を通じて、EDR適用にあたっての実務上の運用細則(追加控除の申請・記録保持要件、IPAとBIRの間での情報共有プロセスなど)を明確化しています。実務上特に注意すべき点として、追加控除の適用を受けるには通常の会計帳簿とは別に控除項目ごとの根拠資料(電力費であれば電力会社発行の請求書、研究開発費であれば費目別の記録等)を整備しておく必要があること、EDRとSCITの選択は登録後に一定の手続きを経て変更可能だが頻繁な変更は想定されていないこと、が挙げられます。制度の適用を最大化するには、登録申請前の段階でどちらの優遇メニューが自社の費用構造に適しているかをシミュレーションしておくことが重要です。
よくある質問
EDRと5%GIE、どちらを選ぶべきですか?
電力費・研究開発費・国内調達費・労務費など追加控除の対象となる費用の比重が大きい製造業・大規模BPO企業ではEDRが有利になりやすい一方、費用構造がシンプルでコンプライアンス負担を抑えたい企業では5%GIEが選好される傾向があります。自社の損益構造をもとに両者の実効負担を試算して判断することをおすすめします。
既存のCREATE法下で登録した企業も新しい制度に移行できますか?
一定の条件下で、旧CREATE法下の登録企業がCREATE MOREの新メニュー(EDR等)へ移行する仕組みが用意されています。移行の可否・手続きは登録済みのIPA(PEZA・BOI等)への確認が必要です。
ITHとEDR/GIEは両方受けられますか?
はい。多くの登録企業はまずITH(所得税休暇)の期間を受け、その終了後にEDRまたは5%GIEのいずれかに移行する設計になっています。立地・活動ティアによってはITH単体で8年に達し、その後の優遇期間と合わせると通算10年超になるケースもあります。
RBELTはすべての登録企業が対象ですか?
ITH適用中またはEDR適用のRBEが対象です。5%GIEを選択したRBEは、地方税相当分が5%GIEの中に既に組み込まれているためRBELTの対象外となります。
輸出比率70%要件を下回った場合はどうなりますか?
VATゼロレート・免税の適用対象から外れるリスクがあります。輸出企業として優遇を受け続けるには、総売上高に占める輸出売上高の比率を継続的にモニタリングし、70%以上を維持する必要があります。
まとめ・専門家への相談
CREATE MORE法は、既存のPEZA・BOI登録企業にとっては優遇メニューの見直し(EDRか5%GIEか)を検討する契機となり、新規進出を検討する企業にとっては立地選定・活動内容の設計段階から優遇の最大化を考慮できる制度です。ただし、追加控除の具体的な適用条件やITHの付与期間は登録証・IPAの認定内容によって個別に決まるため、自社のケースに即した試算と申請書類の準備が欠かせません。カメリアコンサルティングでは、PEZA・BOI登録の実務支援や、CREATE MORE法下での優遇メニュー選択のシミュレーションにも対応しています。
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執筆・監修:日比野和樹
