フィリピンの税務ペナルティはいくらになるか|加算税25%/50%・延滞利息・Compromise Penaltyの計算方法と減額交渉の実務【2026年最新】

フィリピンで税務調査により追徴課税が発生した場合、負担額は「本税+加算税(25%または50%)+延滞利息(年12%)+Compromise Penalty(和解金)」の組み合わせで決まります。単純な期限徒過であれば加算税は25%ですが、虚偽・不正な申告と認定されると50%まで跳ね上がります。さらに、本税部分については和解(Compromise Settlement)による減額交渉の余地もあります。本記事では、それぞれの計算方法と、減額交渉の実務を整理します。

この記事の要点

  • 加算税は原則25%(単純な期限徒過・過少納付等)だが、虚偽・不正な申告や脱税の意図が認定される場合は50%に引き上げられる
  • 延滞利息は年12%(BSPの法定利率6%の2倍)。未納の本税に対して日割りで計算され、加算税・Compromise Penalty自体には利息はかからない
  • Compromise Penalty(和解金)は違反の種類・遅延期間に応じたBIRの内部基準表に基づき、数千ペソ程度が一般的
  • 本税自体を減額できるCompromise Settlement(和解による解決)には「更正の妥当性に疑義がある場合(本税の最低40%)」と「支払能力がない場合(本税の最低10%)」の2つの類型がある
  • 本税100万ペソ以上の和解案件はNational Evaluation Board(NEB)の承認が必要
  • EOPT法(RA 11976)により、年間総売上高2,000万ペソ未満のMicro・Small区分の納税者は、単純な期限徒過型の加算税が25%→10%、延滞利息が年12%→6%、Compromise Penaltyが通常額の50%にそれぞれ軽減される(ただし虚偽・不正申告の50%加算税は軽減対象外)

最終更新日:2026年9月。加算税率・延滞利息率に変更があった場合は随時更新します。

フィリピンの税務全体の位置づけについては「フィリピンの税務完全ガイド」もあわせてご参照ください。

目次

加算税:25%と50%はどう区別されるか

内国歳入法第248条に基づく加算税(Surcharge)は、違反の性質によって2段階に分かれます。25%の加算税は、期限内に申告書を提出しなかった場合、期限内に税額を全額納付しなかった場合、管轄外の税務署に申告した場合、更正税額(Deficiency Tax)の納付が遅れた場合など、通常の期限徒過型の違反に適用されます。一方、50%の加算税は、「意図的な不申告(Willful Neglect)」や、虚偽・不正な申告書の提出(売上の意図的な過少計上、経費の水増し、架空の税額控除の計上など)、脱税の意図が認められる場合に適用されます。BIRが50%の加算税を適用するには、単なる計算ミスや会計上の誤りではなく、不正の事実を立証する必要があるとされています。

延滞利息の計算方法

延滞利息(Interest)は、未納の本税に対して年12%(BSPが定める法定利率6%の2倍)の利率で、納付期限の翌日から実際の納付日まで日割りの単利で計算されます。重要な点として、延滞利息はあくまで未納の本税部分にのみ課され、加算税やCompromise Penalty自体には利息がかかりません。また、更正税に対する利息(Deficiency Interest)と滞納に対する利息(Delinquency Interest)が同一期間・同一金額に対して二重に課されることのないよう調整される扱いになっています。

Compromise Penalty(和解金)とは何か

Compromise Penalty(和解金)は、刑事訴追を回避する目的でBIRとの間で合意する行政上の制裁金で、加算税・延滞利息とは別に課されるものです。金額は違反の種類(不申告、期限後申告、源泉税違反など)と遅延期間に応じてBIRの内部基準表に基づき決定され、一般的には数千ペソ程度の水準です。あくまで納税者側の同意を前提とする性質のものですが、支払いを拒否したからといって加算税・延滞利息などの法定の負担がなくなるわけではない点に注意が必要です。

本税自体を減額できるCompromise Settlement(和解による解決)

ここまでの加算税・延滞利息・Compromise Penaltyとは別に、本税(Basic Tax)自体を減額できる制度としてCompromise Settlement(内国歳入法第204条に基づく和解)があります。これには2つの類型があります。

類型 要件 最低和解率
更正の妥当性に疑義がある場合(Doubtful Validity) 更正が除斥期間経過後に行われた、事実的・法的根拠を欠く、手続き上の瑕疵があるなど、争う合理的な根拠がある場合 本税の40%
支払能力がない場合(Financial Incapacity) 純資産が税額を下回る、事業が債務超過にある、著しい損失が生じているなど、支払不能を示す証拠がある場合 本税の10%

ここでいう「本税」は、加算税・延滞利息・Compromise Penaltyを含まない元本部分のみを指す点に注意してください。和解率はあくまで本税に対する割合であり、和解が成立しても加算税・延滞利息が自動的に免除されるわけではありません(加算税・延滞利息のみを減免する制度は「Abatement(減免)」と呼ばれ、Compromise Settlementとは別の手続きです)。申請にあたっては、財務諸表・支払不能を示す証拠、または更正の妥当性を争う法的根拠などの資料の提出が必要です。承認プロセスは、本税100万ペソ未満の案件は管轄の地方国税事務所(RDO)レベルで審査されますが、本税100万ペソ以上の案件はNational Evaluation Board(NEB)の承認が必要です。税務調査の初期段階でどこまで争い、どの類型で和解を目指すかの判断が、最終的な負担額を大きく左右します。税務調査全体の流れについては「BIR税務調査の新枠組み」もあわせてご参照ください。

EOPT法による軽減税率(Micro・Small納税者区分)

ここまでの加算税25%・延滞利息年12%は、EOPT法(Ease of Paying Taxes Act、RA 11976)とその施行規則RR 6-2024により、納税者の規模区分によっては軽減されます。EOPT法は、年間総売上高を基準に納税者をMicro(300万ペソ未満)、Small(300万ペソ以上2,000万ペソ未満)、Medium(2,000万ペソ以上10億ペソ未満)、Large(10億ペソ以上)の4区分に分類しており、このうちMicro・Small区分の納税者については、単純な期限徒過型の違反(不申告、期限内未納付など)に対する加算税が25%から10%に、延滞利息が年12%から6%に、それぞれ軽減されます。Compromise Penaltyについても、通常のBIR基準表の50%相当額に軽減されます。ただし、この軽減は「意図的な不申告」や虚偽・不正な申告など不正が認定される場合の50%加算税には適用されない点に注意が必要です。

区分 年間総売上高 加算税(期限徒過型) 延滞利息(年率) Compromise Penalty
Micro 300万ペソ未満 10% 6% 通常額の50%
Small 300万ペソ以上2,000万ペソ未満 10% 6% 通常額の50%
Medium 2,000万ペソ以上10億ペソ未満 25% 12% 通常額の100%
Large 10億ペソ以上 25% 12% 通常額の100%

試算例として、更正税額(本税)50万ペソ、納付期限から6か月遅延した単純な期限徒過のケースを比較してみます。Medium・Large区分の場合、加算税は50万ペソ×25%=12.5万ペソ、延滞利息は50万ペソ×12%×6/12=3万ペソとなり、Compromise Penaltyを仮に2万ペソとすると、本税と合わせた合計負担は約67.5万ペソになります。一方、同じ本税・遅延期間でMicro・Small区分に該当する場合、加算税は50万ペソ×10%=5万ペソ、延滞利息は50万ペソ×6%×6/12=1.5万ペソ、Compromise Penaltyは通常額の50%として仮に1万ペソとすると、合計負担は約57.5万ペソとなり、Medium・Large区分と比べて約10万ペソ(本税の2%相当)の差が生じます(Compromise Penaltyの実際の金額は違反の内容・BIRの内部基準表によって変動するため、この試算はあくまで加算税・延滞利息率の差を示す目安です)。

日系企業の場合、フィリピン現地法人の多くはEOPT法上のMedium・Large区分(年間総売上高2,000万ペソ=日本円で概ね5,000万円超)に該当することが多く、この軽減の対象外となるケースが大半とみられます。ただし、設立直後で売上規模がまだ小さいスタートアップ的な現地法人や、駐在員事務所から現地法人へ切り替えたばかりの小規模拠点などは、Small区分(2,000万ペソ未満)に該当する可能性があるため、自社の直近の年間総売上高がどの区分に当たるかを確認しておくことをおすすめします。

よくある質問

加算税50%が適用されるのはどんな場合ですか?

意図的な不申告や、虚偽・不正な申告書の提出(売上の過少計上、経費の水増し等)、脱税の意図が認められる場合です。単なる計算ミスや会計処理の誤りは対象外とされていますが、BIRが不正の事実を主張してくるケースもあるため、日頃からの証憑管理が重要です。

Compromise SettlementとAbatementはどう違いますか?

Compromise Settlementは本税自体を減額する制度(最低40%または10%)で、Abatementは加算税・延滞利息のみを減免する制度です。本税は全額納付が前提になります。両者は別の手続きであり、状況に応じて使い分けます。

税務調査で指摘を受けたら、まず何をすべきですか?

指摘内容の事実関係と法的根拠を確認し、争う余地があるかどうかを見極めることが最初のステップです。争う根拠が乏しい場合は、支払能力の状況に応じてCompromise Settlementの活用を検討することになります。

加算税・延滞利息・Compromise Penaltyはどの順番で計算されますか?

本税に加算税率(25%または50%)を乗じて加算税額を算出し、本税に対して延滞利息を日割りで加算し、これらとは別にCompromise Penaltyが課されます。延滞利息は加算税やCompromise Penalty自体には課されません。

自社がEOPT法上のMicro・Small区分に該当するかどうかはどう確認すればよいですか?

判定基準は直近の年間総売上高(Gross Sales/Receipts)です。300万ペソ未満はMicro、300万ペソ以上2,000万ペソ未満はSmallに区分されます。BIR登録証(COR)上の区分表示ではなく実際の売上高の推移で判定されるため、毎年の売上規模次第で区分が変わり得る点に注意してください。

日系企業の現地法人は、この軽減税率の対象になりますか?

フィリピンに進出している日系現地法人の多くはMedium・Large区分(年間総売上高2,000万ペソ以上)に該当し、対象外となるケースが大半とみられます。ただし、設立間もない小規模拠点やスタートアップ的な現地法人はSmall区分に該当する可能性があるため、自社の直近の年間総売上高を確認しておくことをおすすめします。

まとめ・専門家への相談

フィリピンの税務ペナルティは、加算税・延滞利息・Compromise Penaltyという3つの要素が積み重なる構造になっており、さらに本税自体を減らせるCompromise Settlementという別の制度も存在します。加えて、EOPT法により売上規模の小さいMicro・Small区分の納税者には税率面での軽減措置も用意されていますが、日系現地法人の多くはこの軽減の対象外となる規模であることにも留意が必要です。どの制度をどう使うか、どこまで争うべきかの判断は、追徴額の規模や指摘内容の性質によって大きく変わるため、個別の状況に応じた検討が必要になります。税務調査で指摘を受けた際の初動対応や減額交渉の進め方については、専門家への相談をおすすめします。カメリアコンサルティングでは、日系企業の税務調査対応・ペナルティ減額交渉の実務支援にも対応しています。

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執筆・監修:日比野和樹

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