MENU
【2026年12月31日期限】PEZA登録企業の国内販売VAT12%と買主納付|RR 9-2025→RR 1-2026で何が変わり、いつまでに何をすべきか
PEZA・BOI登録企業(RBE)が国内市場向け企業(DME)や非登録企業へ行う国内販売は、ゼロレート・免税とされない限り12%のVATの対象となり、多くのB2B取引ではVATの納付義務が買い手に移ります(RR 9-2025、2025年2月27日公表・3月14日有効)。2026年2月16日公表(3月3日有効)のRR 1-2026でこの制度は見直され、VAT登録のDMEの販売などは買主納付の対象から外れました。本記事では、この一連の変更の中身と、2026年12月31日までに対応すべきインボイスの修正について整理します。
この記事の要点
- RBEからDME・非登録企業への国内販売は、ゼロレート・免税でない限り12%のVAT課税対象(立地やインセンティブを問わない)
- B2B取引では、買い手がVATをBIRに直接納付する「買主納付」が原則。ゾーンからの物品は取引ごとにBIR Form 0605(1回の出荷分はまとめて納付可)、サービスやBOI登録企業からの購入は月次でForm 1600-VT
- B2C取引では、従来どおり売り手(RBE)が消費者から受け取ったVATを納付
- RR 1-2026で、VAT登録のDMEの国内販売は買主納付の対象外となり、通常のVAT申告(仕入VATとの相殺)に戻った。ゼロレート・免税取引や、登録外事業(スクラップ販売等)も対象外
- CAS等のインボイスに「VAT on Local Sales」の記載を加える期限は2026年12月31日(RR 1-2026で延長)
最終更新日:2026年10月。関連通達の発出に応じて随時更新します。
フィリピンの税務全体の位置づけについては「フィリピンの税務完全ガイド」もあわせてご参照ください。
RR 9-2025で何が変わったのか(買主納付の導入)
2025年2月27日に公表され、3月14日に有効となったRR 9-2025は、CREATE MORE法による内国歳入法第295条(D)の改正を受け、RBEがDMEや非登録企業に対して行う物品・サービスの国内販売(立地やインセンティブを問わない)に、ゼロレート・免税とされない限り12%のVATを課し、その納付責任を買い手とすることを明確化しました。ここまでは想定の範囲内でしたが、実務上のインパクトが大きかったのは、VATの納付義務の所在です。取引の相手方が事業者か消費者かで扱いが分かれます。
| 取引類型 | VAT納付義務者 | 申告方法 |
|---|---|---|
| B2B(買い手が事業者) | 買い手 | ゾーンからの物品:取引ごとにBIR Form 0605/サービス、BOI登録企業からの購入:月次でForm 1600-VT(買い手がForm 2307を売り手に発行) |
| B2C(買い手が消費者) | 売り手(RBE) | VAT登録企業は四半期ごとのForm 2550Q。5%SCIT企業は、徴収したVATを翌月10日までにForm 0605で納付 |
| VAT登録のDMEの販売、ゼロレート・免税取引、登録外事業の販売 | 売り手 | 通常のVAT申告(買主納付の対象外:RR 1-2026) |
B2B取引では、RBEは請求書にVATを「VAT on Local Sales」という項目で区分表示したうえで、VAT抜きの金額を買い手から受け取ります。買い手側が、区分表示されたVAT相当額を自らBIRに直接納付する仕組みです。買い手にとっては、支払うVATを自社でBIRに納付する事務が新たに発生します。買い手は、売り手のインボイスと、納付を証明するForm 0605または1600-VTの写しを、仕入VATの証憑として保管します。
たとえば、PEZA登録の輸出型製造業A社(Export Enterprise)が、国内の日系商社B社に部品を100万ペソ(VAT抜き)で販売したとします。A社はB社に100万ペソを請求し、請求書には別途「VAT on Local Sales 12万ペソ」と表示します。B社はA社に100万ペソを支払い、12万ペソのVATはA社を経由せず、B社自身がBIR Form 0605で直接BIRに納付します(A社が立地するゾーンから物品を引き取る場合)。納付後のForm 0605はA社に送付され、ゾーンからの搬出の要件にもなります。A社にとっては自社の帳簿上でVATの受け払いが発生しない一方、B社にとっては通常の仕入とは異なる申告事務が毎回発生することになります。
RR 1-2026で何が見直されたか(DMEの除外)
買主納付の仕組みは、特にDME(Domestic Market Enterprise:国内市場企業)から強い懸念の声が上がりました。DMEは元々、国内販売を主たる事業とする登録企業で、通常の内国法人と同様に売上に係るOutput VATから仕入に係るInput VATを控除する形で日々のVAT管理を行っています。ところが買主納付の対象になると、Output VATを買い手が直接納付してしまうため、DME側で仕入税額(Input VAT)との相殺ができなくなり、還付待ちの滞留Input VATが積み上がるという構造的な問題が生じていました。
この問題に対応するため、2026年2月16日に公表され、3月3日に有効となったRR 1-2026では、VAT登録のDMEで、国内購入のVATゼロレートや輸入VAT免税の対象とならないものの国内販売について、買主納付の対象から除外し、売り手(DME)が通常のVAT納税者として申告・納付する扱いに改めました。DMEはOutput VATとInput VATを相殺できるようになります。あわせて、次の取引・企業も買主納付の対象外とされました。
- ゼロレートまたは免税とされる物品・サービスの販売
- 特別法に基づきBOIに登録しているが、改正後の優遇税制(Title XIII)のインセンティブを使っていない企業の販売
- 登録企業であっても、IPAに登録されていない事業活動に関する国内販売(材料・設備等のスクラップ販売を含む)。売り手が通常のVAT納税者として申告・納付します(免税で輸入した設備・原材料の処分については「免税輸入品の売却・廃棄|5年ルールと関税・VATの注意点」)
また、ゾーンからの物品の出荷が1回(トラック1台など)で複数のインボイスを含む場合、買い手はForm 0605をまとめて1回で納付でき、全インボイスの一覧を搬出前に関税局(BOC)へ提出します。なお、DMEとは、CREATE MORE IRRで登録輸出型企業(REE)以外の登録企業と定義されています。自社の登録区分(REEかDMEか)と取引の性質によって扱いが変わるため、取引ごとの確認が必要です。
システム改修の期限はいつか
RR 9-2025では当初、CAS(Computerized Accounting System)などから出力されるインボイスに「VAT on Local Sales」の記載を加える期限が2025年12月31日とされていましたが、RR 1-2026により2026年12月31日まで延長されました(BIR長官は、必要に応じてさらに延長できます)。手書き・印刷済みのインボイスは、使い切るまで「VAT/VAT Amount」欄に「VAT on Local Sales」のスタンプを押して修正でき、BIRの事前承認は不要です。新しくATP(Authority to Print)を取得して印刷する場合は、最初から記載を加えます。国内販売を行う可能性のあるRBEは、期限までにインボイスを修正しておく必要があります。
優遇税制の枠組みは2024年のCREATE MORE法(RA 12066)で改正されており、詳細は「CREATE MORE法で優遇税制はこう変わったか」で解説しています。
実務上、今から確認しておくべきこと
自社がPEZA・BOI登録企業として国内販売を行っている、またはこれから行う予定がある場合、まず自社がDMEと輸出企業のどちらに区分されるかを確認することが出発点になります。VAT登録のDMEで、ゼロレート・免税の優遇を受けていない場合は、通常のVAT申告に戻れるため、既存の経理フローへの影響は限定的です。一方、REE(輸出企業)が国内販売を行う場合などは買主納付の対象になるため、取引先(買い手)に対して、VATの区分表示や納付義務の所在についてあらかじめ説明しておくことが望まれます。また、買い手側の立場としてRBEから物品・役務を購入する日系企業も、自社が買主納付の義務を負う可能性があることを踏まえ、経理システム・支払フローの見直しが必要になる場合があります。累積したInput VATの還付請求についても、買主納付の対象取引が多い場合は還付手続の実務を別途確認しておくとよいでしょう。VAT還付のリスクベース審査の基準や申請書類の作り方については「VAT還付の実務」で詳しく解説しています。
PEZA登録企業のその他の年次コンプライアンス(ITH終了判定、5%SCIT/EDRへの移行手続など)については、別記事「PEZA登録後の税務コンプライアンス完全ガイド」で解説しています。PEZA・BOIどちらに登録すべきかの検討段階については、既存記事「PEZA・BOIインセンティブの最適な選び方」もあわせてご参照ください。
よくある質問
買主納付の対象になるのはどんな取引ですか?
RBEが、DMEまたは非登録企業(事業者)に物品・サービスを販売する取引(B2B)が対象です。買い手が消費者(B2C)の場合は、売り手が納付します。また、VAT登録のDMEの販売、ゼロレート・免税取引、登録外事業(スクラップ販売等)は対象外です。
DMEとはどう判定しますか?
CREATE MORE IRRでは、登録輸出型企業(REE)以外の登録企業がDMEと定義されています。自社の登録証明書やPEZA・BOIとの登録内容を確認する必要があります。
システム改修が2026年12月31日に間に合わない場合、罰則はありますか?
本記事執筆時点で具体的な罰則規定は明確化されていませんが、請求書の記載不備は税務調査での指摘対象になり得るため、期限内の対応をおすすめします。
買主納付の対象取引で、買い手が納付を怠った場合はどうなりますか?
買い手が納付義務者となるため、納付漏れがあれば買い手側が加算税・延滞利息の対象になり得ます。取引先がRBEかどうか、自社が買主納付の対象取引を行っているかどうかを日頃から把握しておくことが重要です。
日系企業がPEZA登録の輸出企業から仕入れている場合、何を確認すべきですか?
まず仕入先がPEZA・BOI等の登録企業かを確認します。登録企業からの国内購入では、自社が買主納付義務を負う可能性があるため、請求書の「VAT on Local Sales」の表示を確認し、ゾーンからの物品はForm 0605、サービスやBOI登録企業からの購入はForm 1600-VTで納付するフローを整備しておく必要があります。Input VATの証憑は、売り手のインボイスと、これらのForm(納付済みの写し)です。
まとめ・専門家への相談
PEZA・BOI登録企業の国内販売にかかるVAT実務は、RR 9-2025からRR 1-2026にかけて短期間で二度見直されており、今後も運用の明確化が続く可能性があります。自社がDMEと輸出企業のどちらに区分されるか、取引ごとに買主納付の対象になるかどうかの判定は、個別の登録内容によって異なるため、具体的な適用可否は専門家への相談をおすすめします。カメリアコンサルティングでは、PEZA・BOI登録企業のVAT実務対応、請求書システムの改修サポートにも対応しています。
あわせて読みたい
執筆・監修:日比野和樹
