フィリピンの中央銀行(BSP)登録とは|外国投資・外国借入の登録手続きとBSRDの取得方法【2026年版】

フィリピン中央銀行(BSP)への外国投資の登録は法律上の義務ではありませんが、登録をしていないと、配当金の海外送金や出資金の払戻しのためにフィリピンの銀行から外貨を購入することが事実上難しくなります。日系企業が現地法人に出資する際は、出資金の送金から1年以内に登録を済ませ、BSP登録証(BSRD:Bangko Sentral Registration Document)を取得しておくのが実務上の基本です。親会社からの借入にも別のBSPの手続きがあります。本記事では、外国投資の登録と外国借入の承認・登録について、期限・必要書類・注意点を整理します。

この記事の要点

  • 外国投資のBSP登録は任意だが、配当金の送金・資本の払戻し・売却代金の送金のために銀行で外貨を購入するには、登録(BSRD)が必要になる
  • 登録期限は、現金出資の場合、外国為替の送金(入金)日から1年以内。BSPへの登録手数料はかからない
  • 主な必要書類は、登録申請書(Annex W)、被仕向送金証明書(CIR)、SEC登録書類(定款・GIS)、代理申請の場合は委任状
  • 2024年のBSP通達第1192号により、上場株式など一部の投資はBSRDなしで登録されるようになったが、現地法人への出資などの直接投資は引き続きBSRDが発行される
  • 外国からの借入(親会社からの借入を含む)は、公的保証付きの借入は事前承認、外貨を銀行経由で返済に充てる借入は登録が必要で、登録は原則として資金の利用から6か月以内

最終更新日:2026年10月。BSPの外国為替規制は改正されることがあるため、手続きの前にBSPの最新の案内をご確認ください。

フィリピン進出にともなう税務全体の位置づけについては「フィリピンの税務完全ガイド」もあわせてご参照ください。

目次

BSP登録が必要になる2つの場面

BSPは、国の対外債務を適切な水準に保ち、国内の外貨を有効に活用するため、外国為替取引を規制しています。日系企業の実務で関係するのは、次の2つです。

項目 対象 手続きの位置づけ
外国投資の登録 日本の親会社などが現地法人に出資した資本(現金出資・現物出資など) 任意。ただし、配当金の送金や出資金の払戻しに外貨が必要な場合は事実上必須
外国借入の承認・登録 フィリピンの居住者(現地法人など)が外国から受ける借入(親会社からの借入を含む) 公的保証付きなど一部は事前承認、外貨を銀行経由で返済に充てる借入は登録が必要

外国投資の登録

登録は任意だが、事実上必要になる理由

フィリピンでは、外国投資をBSPに登録すること自体は義務ではありません。ただし、登録をした投資については、配当金や利益の送金、出資金の払戻し、株式売却代金の本国送金のために、フィリピンの認可代理銀行(AAB)から外貨を購入できます。登録をしていない場合、銀行以外から多額の外貨を調達するのは極めて難しく、配当・減資・売却・清算といった局面になって初めて問題が表面化します。そのため、日本の親会社が現地法人に継続的に出資する場合は、登録をしておくことが現実的です。

登録の期限

現金で出資する場合、外国為替の送金(フィリピン国内への入金)日から1年以内に登録を申請します。現物出資の場合は、出資の態様に応じた起算日から1年以内となります。増資などの追加出資を行った場合も、その出資について登録を行うのが実務上の原則です。

必要書類・手数料・処理期間

項目 内容
登録申請書 外国投資の登録申請書(Annex W)
資金の裏づけ 被仕向送金証明書(CIR:Certificate of Inward Remittance of Foreign Exchange)など、外貨での送金を証明する書類
出資の事実を示す書類 SEC登録書類、定款、GIS(General Information Sheet)など、投資先企業の帳簿・登記上の出資を確認できる書類
代理申請の場合 委任状
手数料 BSPへの登録手数料はかからない(公証・アポスティーユなどの付随費用は別)
処理期間 BSPの標準処理期間は必要書類が揃ってから20〜22営業日とされるが、実際には3か月程度かかるのが一般的

申請は、非居住者の投資家、投資先企業、またはその代理人がBSPの国際業務局(IOD)に対して行います。出資金を送金する際は、送金銀行にCIRの発行を依頼しておくことが後の登録をスムーズにします。

BSRD(BSP登録証)とは

登録が完了すると、BSPから登録証(BSRD)が発行されます。BSRDは、配当金の送金や出資金の払戻しのために銀行で外貨を購入する際に提示を求められる主要な書類です。2020年3月27日以降は電子版のみが発行され、紛失した場合もBSPが発行するのは原本または再発行で、認証コピーは発行されません。

2024年の制度変更(BSP通達第1192号)

BSP通達第1192号(2024年)により、上場株式・債券、ETF、フィリピン預託証券(PDR)など、一部の外国投資(ポートフォリオ投資)は、AABを通じた登録でBSRDの発行が不要になりました。この変更は2024年9月30日に施行されています。一方、現地法人への出資や支店の割当資本など、外国直接投資についてはこれまでどおりBSRDが発行されます。日系企業の現地法人設立・増資はこの直接投資に該当します。

外国借入の承認・登録

対象となる借入

BSPの規制上の外国借入は、フィリピンの居住者が外国から受けるあらゆる債務を指し、通貨は問いません。現地法人が日本の親会社や海外の関連会社、非居住者の株主から受ける借入や立替金も含まれます。

事前承認が必要なケース

公的保証が付された民間部門の外国借入などは、BSPの事前承認が必要です。承認の申請は、借入契約の署名予定日の少なくとも30銀行営業日前までに行う必要があり、すでに署名または資金の引出しが行われている借入は承認の対象になりません。事前承認が必要かどうかは借入の種類によって判断が分かれるため、借入を計画する段階で専門家またはBSPに確認することをおすすめします。

登録が必要なケース

公的保証のない民間同士の借入でも、元本や利息の返済に、フィリピンの銀行から購入した外貨を充てる予定がある場合は、BSPへの登録が必要です。登録の期限は次のとおりです。

借入の種類 登録期限
通常の借入 資金の利用日から6か月以内
短期の借入 引出日から1か月以内

登録後に借入条件を変更した場合や、一部または全額の期限前返済・取消しを行った場合は、情報を入手してから15銀行営業日以内にBSPへ届け出る必要があります。フィリピンの銀行からの外貨借入など、一定の借入は承認・登録の対象外とされていますが、所定の報告は必要です。なお、借入にかかる手数料や処理期間は改正されることがあるため、申請時点のBSPの案内で確認してください。

未登録の場合に起こること

登録が必要な借入を登録せずに実行すると、返済のために銀行から外貨を購入できなくなります。親会社への元本・利息の返済が滞る原因になるため、借入契約の署名前に登録の要否を確認しておくことが重要です。

日系企業が注意すべき実務ポイント

  • 出資時にCIRを確実に取得する:出資金の送金時に、送金を受けた銀行から被仕向送金証明書を受け取り、保管しておきます。
  • 登録期限(1年)を管理する:設立時の出資だけでなく、増資のたびに期限管理が必要です。
  • 登録には時間がかかる前提で動く:BSPの標準処理期間は20〜22営業日ですが、実際には3か月程度かかるのが一般的です。配当や払戻しの予定時期から逆算し、早めに申請しておきます。
  • 出資と貸付を区別して管理する:親会社からの資金提供が出資なのか借入なのかで、BSPの手続きが異なります。契約書・帳簿・送金目的の記載を一致させておきます。
  • 配当・利息の送金には税務の論点もある:BSPの登録とは別に、配当や利息の送金には源泉税が課されます。税率は「フィリピン源泉税(EWT・FWT)税率一覧表」で整理しています。
  • 進出形態の選択とあわせて検討する:支店と現地法人では、資本の位置づけ(支店は割当資本)や税務が異なります。「支店と現地法人の税務比較」もあわせてご覧ください。

よくある質問

外国投資のBSP登録は義務ですか?

義務ではありません。ただし、配当金の送金や出資金の払戻しのために銀行で外貨を購入する場合は、登録が必要です。

登録はいつまでにすればよいですか?

現金出資の場合、外国為替の送金日から1年以内です。期限を過ぎた場合の取扱いは、BSPに個別に確認する必要があります。

登録にはいくら費用がかかりますか?

BSPへの登録手数料はかかりません。書類の公証やアポスティーユなどの付随費用は別途必要です。

BSRDを紛失した場合はどうすればよいですか?

BSPが発行するのは原本または再発行で、認証コピーは発行されません。紛失した場合は、BSPに再発行を申請します。

親会社からの借入もBSPへの登録が必要ですか?

親会社からの借入も外国借入に含まれます。返済に銀行から購入した外貨を充てる場合は登録が必要で、公的保証付きなど一部の借入は事前承認が必要です。

BSPに登録していなくても、配当金を送金できますか?

登録がないと、銀行で外貨を購入して送金することが事実上難しくなります。配当を予定している場合は、事前に登録を済ませておくことをおすすめします。

まとめ・専門家への相談

BSPの登録は、外国投資では任意である一方、配当・払戻し・売却の際に外貨を調達するための前提条件になります。出資から1年以内の登録を徹底し、親会社からの借入についても、署名前に承認・登録の要否を確認しておくことが重要です。BSPの手続きは通達の改正で変更されることがあるため、実行前にBSPの最新の案内を確認してください。カメリアコンサルティングでは、日系企業の現地法人設立・増資・親子間の資金のやり取りにともなうBSP登録や税務のご相談を承っています。まずは「お問い合わせ」からお気軽にご連絡ください。

あわせて読みたい

出典:BSP「Foreign Exchange Regulations FAQs」(2025年12月版)、BSP通達第1192号(2024年)、BSP外国為替規制ガイド(外国借入・外国投資)

執筆・監修:日比野和樹

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