【2026年最新版】フィリピン源泉税(EWT・FWT)税率一覧表|Top Withholding Agentの0.5%特例と、2307回収・0619E/1601EQ申告の実務(RR 24-2025 / RMC 79-2026)

フィリピンの源泉税は、税額控除できる拡大源泉税(EWT)と、それだけで納税が完結する最終源泉税(FWT)の2種類に分かれ、さらに2025年のRR 24-2025によりTop Withholding Agent(TWA)向けの税率区分が細分化されました。卸売用の自動車・医薬品・燃料などの特定品目には0.5%という軽減税率が新設される一方、通常の商品仕入れは1%、役務提供は2%が基本です。本記事では、主要な源泉税率を一覧化し、2307・0619-E・1601-EQという3つの様式の関係と実務上の回収フローを整理します。

この記事の要点

  • EWT(拡大源泉税)は税額控除の対象(Creditable)、FWT(最終源泉税)はそれ自体で納税が完結(Final)という根本的な違いがある
  • RR 24-2025・RMC 79-2026により、Top Withholding Agent(TWA)が支払う特定の卸売用商品(自動車・医薬品・燃料等)には0.5%の軽減税率が新設された。通常の商品仕入れは1%、役務提供は2%が基本
  • 非居住者向けの配当・利子・使用料には、新・日比租税条約(配当5/10/15%・利子10%・使用料一律10%)が優先適用される
  • Form 2307(源泉徴収証明書)は取引ごとに発行、Form 0619-E(月次納付)とForm 1601-EQ(四半期納付)は源泉徴収義務者側の申告様式で、それぞれ役割が異なる
  • 0.5%軽減税率の適用には「卸売目的」であることの立証(DTI/SEC登録・営業許可・BOC輸入者認定等)が必要で、小売主体の取引先には通常の1%が適用される

最終更新日:2026年9月。税率・様式に変更があった場合は随時更新します。

フィリピンの税務全体の位置づけについては「フィリピンの税務完全ガイド」もあわせてご参照ください。

目次

EWTとFWTの根本的な違い

フィリピンの源泉税は、大きく拡大源泉税(Expanded Withholding Tax、EWT)と最終源泉税(Final Withholding Tax、FWT)の2種類に分かれます。EWTは、支払時に源泉徴収された税額が受取側の法人税申告において税額控除(Creditable)の対象となる仕組みで、専門家報酬・賃貸料・請負代金などの国内取引に広く適用されます。一方FWTは、源泉徴収された時点でその所得に対する納税義務が完結する仕組みで、受取側は追加の申告を要しません。配当・利子・一部の使用料、非居住者への支払いの多くがFWTの対象です。この違いを理解していないと、EWTが課された所得を申告時に二重に課税してしまう、あるいはFWT対象の所得を誤って追加申告してしまうミスにつながります。

国内取引の源泉税率一覧(EWT)

支払の種類 税率
専門家報酬(法人・個人事業者向け) 10%〜15%(年間報酬額により区分)
専門家報酬(個人向け) 5%〜10%(年間報酬額により区分)
不動産・動産の賃貸料 5%
請負代金(建設・サービス契約等) 2%
Top Withholding Agentが支払う商品代金(通常) 1%
Top Withholding Agentが支払う商品代金(卸売用の自動車・医薬品・燃料等、RR 24-2025) 0.5%
Top Withholding Agentが支払う役務代金 2%
政府機関による物品調達 1%
政府機関による役務調達 2%

国内取引の源泉税率一覧(FWT)

所得の種類 税率
居住者への配当 10%
銀行預金利子等 20%
書籍・文芸的著作物の使用料 10%
その他の使用料 20%
賞金・当選金(1万ペソ超) 20%
支店利益送金税(BPRT、国内支店から国外本店への送金) 15%(統計上)※日比間は租税条約により10%に軽減

支店利益送金税(BPRT)の日比租税条約による軽減の詳細については「支店vs現地法人・BPRTの実務比較」で解説しています。

非居住者向け:新・日比租税条約の優先適用

日本の親会社・関連会社への配当・利子・使用料の支払いについては、内国歳入法上の非居住者向け税率(配当15/25%・利子20%・使用料25%が原則)よりも、日比租税条約に基づく軽減税率が優先的に適用されます。2026年5月に署名された新条約の下では、配当は持株比率等の要件により5%・10%・15%の3段階、利子は一律10%、使用料は一律10%に軽減されます。条約の軽減税率を適用するには、事前にBIRへの租税条約適用申請(TTRA)を行う必要があり、申請を怠ると原則税率での源泉徴収を余儀なくされる点に注意が必要です。新条約の詳細な変更点については「新・日比租税条約の全変更点」、クロスボーダーの役務提供に対する源泉課税の判定基準については「日本本社への経営指導料・技術支援料の源泉課税」もあわせてご参照ください。

0.5%軽減税率の適用要件:「卸売目的」の立証

RR 24-2025・RMC 79-2026により新設された0.5%の軽減税率は、Top Withholding Agentが特定の商品(完成車・ノックダウン部品を含む自動車・オートバイ、FDA登録の医薬品、固体・液体燃料等)を仕入れる際、その仕入先が「製造業者または直接輸入業者」であり、かつ当該商品が「卸売」を目的として供給されている場合にのみ適用されます。RMC 79-2026により、この「卸売目的」とは買主の使用目的ではなく売主の通常の事業形態(卸売業者かどうか)で判定される旨が明確化されており、小売中心の取引先からの仕入れには通常の1%が適用されます。適用の立証には、BIR登録証、DTI・SEC登録、営業許可証、BOC輸入者認定などの書類が必要とされています。誤って0.5%を適用してしまった場合は、同一課税年度内であれば四半期源泉税申告書(Form 1601-EQ)を通じて是正できるとされています。

Form 2307・0619-E・1601-EQの関係と実務フロー

国内取引のEWTに関する実務は、3つの様式が連動して機能します。Form 2307(源泉徴収税額証明書)は、取引ごとに源泉徴収義務者(支払側)が発行し、受取側(支払われる側)に交付する証明書で、受取側はこれを自社の法人税申告時の税額控除の根拠資料として保管します。Form 0619-E(EWTの月次納付書)は、源泉徴収義務者が毎月の源泉徴収額をまとめて納付するための様式で、原則として翌月10日(eFPS)または15日(書面)が期限です。Form 1601-EQ(EWTの四半期納付書)は、四半期ごとに、その期間中に源泉徴収した内容をより詳細に(相手先ごとの内訳を含むQAP:Quarterly Alphalist of Payeesとあわせて)申告する様式です。実務上、取引先からForm 2307を確実に回収できていないと、自社の税額控除が認められず、実質的な二重課税状態になるリスクがあるため、支払時にForm 2307の発行・回収を徹底することが重要です。

よくある質問

EWTとFWTを取り違えるとどうなりますか?

FWT対象の所得をEWTと誤認して追加申告してしまうと二重課税になり、逆にEWT対象の所得をFWTと誤認すると税額控除の機会を逃すことになります。支払の性質(国内取引か非居住者向けか、配当・利子・使用料かどうか)を都度確認することが重要です。

0.5%軽減税率はどんな取引先からの仕入れに適用されますか?

自動車(完成車・ノックダウン部品含む)、FDA登録の医薬品、固体・液体燃料等を、製造業者または直接輸入業者から卸売目的で仕入れる場合に適用されます。小売中心の取引先からの仕入れには通常の1%が適用されます。

日本の親会社への配当は何%の源泉税がかかりますか?

新・日比租税条約の下では、持株比率等の要件により5%・10%・15%のいずれかが適用されます。条約の軽減税率を使うには事前のTTRA申請が必要です。

Form 2307を取引先から受け取れなかった場合はどうなりますか?

自社の法人税申告における税額控除の根拠資料がないことになり、控除が認められないリスクがあります。支払時に確実にForm 2307の発行・回収を行う社内フローを整備することをおすすめします。

0619-Eと1601-EQは両方申告する必要がありますか?

はい。0619-Eは月次の速報的な納付、1601-EQは四半期ごとの詳細な申告(相手先別内訳を含む)という位置づけで、両方の申告が必要です。

まとめ・専門家への相談

フィリピンの源泉税制度は、EWT・FWTの区分に加えて、2025年以降の改正でTop Withholding Agent向けの税率がさらに細分化されており、自社がどの区分・税率の適用対象になるかを正確に把握することが実務上の出発点になります。特に日系企業では、日本の親会社への配当・利子・使用料の支払いに租税条約の軽減税率を適用できているか、取引先からForm 2307を確実に回収できているかが、税負担・税額控除の両面で重要なチェックポイントになります。自社の源泉税率の適用区分や様式間の整合性については、専門家への相談をおすすめします。カメリアコンサルティングでは、日系企業の源泉税実務・租税条約適用の支援にも対応しています。

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執筆・監修:日比野和樹

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