請求書のCWT表示、システム改修の期限と移行措置が明確に|RMC 112-2026の実務ガイド(誰が判断するか・Credit Memo・2026年12月31日と2027年3月31日)

BIRは、請求書に源泉税(CWT)額を独立項目で表示する義務(RR 6-2026)の運用を明確にするRMC 112-2026を公表しました。表示が必要なのは源泉徴収の対象となる取引だけであること、源泉税の情報は買い手が売り手に伝えること、システムの改修には、電子インボイスの義務の対象となるシステムは2026年12月31日まで、その他のPOSなどとCRMは2027年3月31日までの期間が認められることなどが示されています。

RMC 112-2026は2026年10月12日付、BIRの受付は10月22日です。

目次

この記事の要点

  • CWT額の表示は、その取引が源泉徴収の対象である場合だけ必要。B2BかB2Cかだけでは決まらない
  • 源泉徴収が必要かは買い手(支払者)が判断し(BIRの検証の対象)、請求書の作成・確定の前に、その時点で分かる範囲の源泉の情報を売り手に伝える
  • 売り手は、買い手から適時に伝えられた情報に、善意で依拠できる(誤りを知っていた、または合理的に知り得た場合を除く)。依拠したことを示す記録を残しておく
  • 発行後の判明や金額の訂正は、BIRに登録したCredit Memoで行う
  • システム改修の期限(本RMCで示されたもの。後の通達で変更の可能性あり):電子インボイスの義務の対象となるシステムは2026年12月31日、その他のPOS等とCRMは2027年3月31日。改修までの暫定措置は、改修の完了か期限の到来の早い方で終わる

何が問題になっていたのか

RR 6-2026は、請求書の記載事項(RR 7-2024 Section 6(B))に、CWT額の独立表示を加えました(詳しくは「請求書にCWT額の表示が義務化|RR 6-2026」)。しかし、CASやPOSで請求書を出している企業がいつまでにシステムを直せばよいのか、売り手がどうやって買い手の源泉税の額を知るのかが明確ではありませんでした。RMC 112-2026は、これらの点を整理しています。

CWT額を表示するのは、源泉対象の取引だけ

CWT額の表示が必要なのは、その取引が、内国歳入法と関係する通達で源泉徴収の対象となる場合だけです。取引が源泉の対象になるのは、買い手(支払者)が支払いから源泉徴収する義務を負う場合です。

  • B2B取引でも、買い手に源泉徴収の義務がなければ、CWTの表示は不要
  • 買い手が源泉徴収義務者でない通常のB2C取引は、源泉の対象外(個人への不動産〔通常の資産〕の販売を除く)
  • 源泉の対象でない取引では、CWT欄は空欄、「N/A」または「0.00」でよく、違反にはならない

ここでいうCWTは、内国歳入法第57条(B)とRR 2-98 Section 2.57.2に基づき、買い手が源泉徴収する所得税です。

誰が判断し、誰が伝えるか

買い手(支払者):源泉徴収が必要かを判断します(BIRによる検証の対象)。必要な場合は、請求書が作成・確定される前に、その時点で入手・算定できる範囲で、源泉徴収義務者であること、所得の区分、ATC、税率、課税標準、源泉税額を、売り手に伝えます。B2B、政府、専門家報酬、賃貸、請負、手数料などの取引では、売り手が請求書を確定する前に伝えることが求められています。

売り手(受取者):伝えられた情報と取引の内容に基づき、請求書を全額で発行し、CWTを独立項目として表示し、差引の金額も示します。CWTを値引きとして扱ったり、売上やVATの課税標準を減らしたりしてはいけません。源泉の対象で、金額が発行時に合理的に分かるのに表示しなかった場合は、売り手が請求書の記載要件の違反を問われることがあります。

善意での依拠:売り手は、買い手から適時に伝えられた源泉の情報に、善意で依拠できます。買い手が完全・正確な情報を適時に伝えなかったことだけを原因とする記載漏れ・誤りについて、売り手は責任を問われません。ただし、売り手が、その取引が源泉の対象であることや、情報の誤りを知っていた、または合理的に知り得た場合は除きます。売り手は、善意で依拠したことを示す記録・書類を残しておく必要があります。また、契約書・発注書・請求の指示・過去の取引などで源泉の情報がすでに分かっている場合は、売り手はそれを請求書に反映します。

小売の売り手:主に一般消費者に販売する売り手は、来店する顧客全員に源泉徴収義務者かどうかを聞く必要はありません。ただし、買い手が源泉徴収義務者であることを示した場合や、状況から合理的に源泉の対象と判断できる場合は、その情報に基づいて対応します。

発行後の判明・金額の訂正:Credit Memo

  • 請求書の発行後に、買い手が源泉徴収が必要だったと判断した場合は、買い手が売り手にすぐ伝え、源泉の情報と計算を示します。売り手は、元の請求書を参照するBIR登録済みのCredit Memoを発行して、CWT額を示します
  • CWT額や源泉の情報を後から決定・訂正・変更する場合も、元の請求書を参照するBIR登録済みのCredit Memoで記録します
  • 請求書のCWT額と、買い手が計算した額に差がある場合は、できる限り支払いの前に照合します
  • 元の請求書は取引の記録として残し、消したり、上書きしたり、取り消したり、再利用したりしてはいけません
  • このCredit Memoは、売上・VATの課税標準・売上VATを減らすものではなく、CWTと差引の金額を記録するためのものです

そのほかの重要なルール

  • 請求書のCWT額は参考情報:買い手の源泉徴収票(Form 2307)の発行義務はなくならない。請求書にCWT額があるだけでは、売り手の税額控除は確定しない
  • 買い手の仕入VAT・経費:CWT額の記載がないことだけを理由に、否認されることはない。ただし、仕入VATは必要なVATの情報がそろっていること、経費は通常かつ必要な事業上の支出で、規定どおりの証憑で裏付けられていることが前提
  • 源泉徴収の時期は変わらない:請求書への表示は請求書のためのルールで、源泉徴収の義務が生じる時期(第57条、RR 2-98 Section 2.57.4)は変わらない

ECサイト・プラットフォームを使う場合

購入者への販売を仲介する場合:プラットフォームが販売者への送金から源泉徴収する場合、販売者は、購入者に全額で請求書を発行し、「Less: Withholding Tax」などの文言を表示します。ただし、購入者は源泉徴収義務者ではないため、プラットフォームが源泉徴収した額を、購入者の支払額から差し引いてはいけません(CWT欄は空欄等でよい)。プラットフォームは、精算書などに源泉税を示し、源泉徴収票を発行します。販売者は、プラットフォームからの差引後の送金を受け取ったことだけを理由に、別の売上請求書を発行しません。

プラットフォーム自身が買い手になる場合:プラットフォームが自らの名前で仕入れて再販売する場合などは、販売者はプラットフォームに請求書を発行し、発行時に分かる、または合理的に算定できるCWT額を表示します。

請求書の種類ごとの対応と期限

請求書の種類 移行期間中の扱い 期限
手書き・ルーズリーフ(RR 6-2026の発効時点で未使用・未発行の分) 使い切るまで使用可。源泉対象の取引のときだけ、「Less: Withholding Tax」等の文言とCWT額を、発行前に原本と控えの両方に記載する。事前の押印、廃棄・返納、新しいATP、RDOの事前承認は不要。必須の記載事項が読めなくならないように記載する 使い切るまで。RR 6-2026の発効後のATPで新たに印刷する分は、CWTの欄を設ける
電子インボイスの義務の対象となるCAS/CBA・請求書ソフト(RR 11-2025〔RR 26-2025で改正〕・RMC 98-2026) 改修までは、源泉対象の取引のときだけ、印刷した請求書に、発行前に文言とCWT額を押印・印字・手書きする(原本と再印刷分) 2026年12月31日まで(2027年1月1日以降はCWTの欄を常に表示)。後の通達で変更の可能性あり
電子インボイスの義務の対象でないPOSなど 同上 2027年3月31日まで(コミッショナーが別の日を定める場合あり)
CRM(キャッシュレジスター) 改修までは、CRMの請求書にひも付けて、所定の方法で記載する(請求書番号・売上記録・監査証跡は変えない) 2027年3月31日まで(2027年4月1日以降はすべてのCRMで表示)。BIRが早い期限を定める場合あり
  • 源泉対象の取引とそうでない取引で、請求書の冊子・番号・系列を分けてはいけません。同じ様式を使い、源泉対象のときだけCWT欄を記入します
  • 暫定措置では、元の請求書番号・総売上・売上記録・電子ジャーナル・監査証跡を変えず、売上は全額で計上し、CWTは税額控除・未収として別に認識します。CWTを記載した請求書の記録を残し、帳簿・源泉徴収票と照合します
  • 暫定措置は、システムの改修の完了か、期限の到来の早い方で終わります。RMC 112-2026には、期限の後も手書き等を続けてよいという定めはありません

改修後のシステムは、すべての請求書に「Less: Withholding Tax」などの文言とCWTの欄を常に表示し、源泉対象の取引では、買い手の源泉徴収義務者としての区分、所得の区分またはATC、税率、課税標準、CWT額、総額、差引の金額を保存して、帳簿・源泉徴収票と照合できるようにします。誰が源泉の扱いを入力・変更・承認したかの監査ログも必要です。

システム改修は「限定的な変更」か

CWTの情報を取り込み・計算・記録・照合・報告・表示するためだけの改修で、請求書の番号管理、主要な売上記録の機能、システム構成、データベースの構造、セキュリティ、監査証跡などの中核の機能を大きく変えないものは、「限定的なシステム変更(Limited System Change)」として扱われ、CRM・POSの新たな登録や、CAS・CBAの新たな登録は不要です(既存の軽微な変更の届出などのルールは引き続き適用)。

一方、CWTの対応に合理的に必要な範囲を超え、中核の機能に大きく影響する変更(所有・支配の変更、データモデル、ホスティング環境、暗号化・認証、データの保管場所、CWT以外の連携など)は「重要な変更(Material System Change)」となり、使用前に所定の登録・承認が必要です。両方を含む場合は重要な変更として扱われますが、CWTの部分を独立して特定・文書化・テスト・実装できる場合は、その部分を限定的な変更として扱えます。

区分に疑問がある場合は、BIRの認定委員会・技術作業部会、または管轄のRDO・大規模納税者部門の権限ある技術評価者が判断し、調査官が単独で判断することはありません。改修の内容を示す書類は保存し、求めに応じてBIRに提出できるようにしておきます。

実務で確認しておくこと

売り手として

  1. 顧客ごとに、源泉徴収義務者か、どの税率かの情報を、契約・発注書・過去の取引から整理する
  2. 源泉対象の取引の請求書に、CWT額と差引の金額を表示する運用を決める(改修までは暫定措置で記載)
  3. 買い手から伝えられた源泉の情報を記録として残す
  4. 発行後の修正に使うCredit Memoの様式を、BIRに登録しておく

買い手として

  1. 仕入先に、源泉の情報(ATC、税率、課税標準、源泉税額)を、請求書の作成前に伝える流れを作る
  2. Form 2307の発行は、これまでどおり行う

システム

  1. 自社のシステムが、電子インボイスの義務の対象か、その他のPOS・CRMかを確認し、該当する期限までに改修を完了する
  2. 改修が「限定的な変更」にとどまるかを確認し、改修の記録を保存する

よくある質問

すべての請求書にCWT額を書く必要がありますか?

いいえ。源泉徴収の対象となる取引だけです。対象でない取引では、CWT欄は空欄、「N/A」または「0.00」で構いません。

買い手から源泉の情報をもらえない場合はどうなりますか?

買い手の情報提供の不備だけが原因の記載漏れ・誤りについては、売り手が源泉の対象であることなどを知っていた、または合理的に知り得た場合を除き、責任を問われません。売り手は、善意で依拠したことを示す記録を残しておく必要があります。契約書などで源泉の情報が分かっている場合は、それを反映します。

システムの改修が期限に間に合わない場合は?

電子インボイスの義務の対象となるシステムは2026年12月31日まで、その他のPOSとCRMは2027年3月31日までの改修期間が示されています(後の通達で変更の可能性あり)。それまでは、源泉対象の取引のときに、印刷した請求書に文言とCWT額を記載します。この暫定措置は期限の到来で終わり、RMC 112-2026には、期限の後も続けてよいという定めはありません。

手書きの請求書は、あらかじめ全部に押印しておく必要がありますか?

いいえ。源泉対象の取引で使うときに記載すればよく、事前の押印や新しいATPは不要です。

まとめ

RMC 112-2026で、CWTの表示は源泉対象の取引に限られること、買い手が情報を伝えること、システムの種類ごとの改修期限が示され、RR 6-2026への対応の見通しが立ちました。自社のシステムがどの区分に当たるかを確認し、該当する期限までに、CWTの欄を含めた改修を完了してください。カメリアコンサルティングでは、請求書と会計システムの対応、源泉税の実務を支援しています。

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執筆:五十嵐碧/監修:日比野和樹

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