フィリピン電子インボイス義務化の2026年12月31日期限まで残り4か月|対象企業の判定・JSON構造化データ要件・導入費用の追加控除(RR 11-2025 / RR 26-2025)

フィリピンでは2026年12月31日までに、対象企業は紙のインボイス・領収書からBIR公認の電子インボイスシステムへの移行が義務化されます。根拠となるRR 11-2025は当初2026年3月を初期対応期限としていましたが、RR 26-2025により2026年12月31日へ延長されました。残り期間はおよそ4か月です。本記事では、自社が対象になるかどうかの判定方法、JSON構造化データの要件、そしてCREATE MORE法による導入費用の追加控除について整理します。

この記事の要点

  • RR 11-2025・RR 26-2025により、対象企業は2026年12月31日までに電子インボイスシステムへの対応が義務化
  • 第1弾(Group 1)の対象は、eコマース・インターネット取引事業者(零細事業者を除く)、Large Taxpayers Service管轄企業、EOPT法上の大規模納税者(年間売上高10億ペソ以上が目安)、CAS・CBA・請求書発行ソフト利用企業
  • PEZA・BOI登録企業(RBE)や輸出企業、POS利用企業は第2弾(Group 2)扱いで、期限は別途のRRで定められる予定
  • インボイスはJSON形式(送信以外の用途ではXMLも可)で、TIN・取引先情報・VAT区分など54項目以上のデータを含む必要がある
  • CREATE MORE法により、システム導入費用について中小・零細事業者は100%、中堅・大企業は50%の追加損金算入が可能

最終更新日:2026年9月。第2弾の対象・期限が確定次第、随時更新します。

フィリピンの税務全体の位置づけについては「フィリピンの税務完全ガイド」もあわせてご参照ください。

目次

何が義務化されるのか(RR 11-2025・RR 26-2025の枠組み)

RR 11-2025は、CREATE MORE法(RA 12066)を踏まえて、BIR公認・認定のソフトウェアによりシステム生成された電子インボイスの発行と、BIRの電子インボイスシステム(EIS:Electronic Invoicing System)への取引データの電子送信を義務化する規則です。紙の請求書をスキャンした画像やPDF化しただけのものは電子インボイスとして認められません。当初、対象企業は2026年3月までに対応する必要があるとされていましたが、システム整備・ベンダー対応の遅れを踏まえてRR 26-2025が発出され、初期対応期限が2026年12月31日まで延長されました。BIRのシステム側の受け入れ準備が整い次第、対象企業は取引データをリアルタイムに近い形でBIRへ送信する「電子売上報告(Electronic Sales Reporting)」の運用も始まる見込みです。

自社は対象になるか(Group 1とGroup 2の判定)

今回の義務化は全企業一律ではなく、段階的に対象が広がる設計になっています。2026年12月31日が期限となるのは、以下の「Group 1」に該当する企業です。

区分 対象 期限
Group 1(第1弾) eコマース・インターネット取引事業者(零細事業者を除く)/Large Taxpayers Service管轄企業/EOPT法上の大規模納税者(目安:年間売上高10億ペソ以上)/CAS・CBA・請求書発行ソフト利用企業 2026年12月31日
Group 2(第2弾) 輸出企業、PEZA・BOI等のRBE、POS利用企業、その他BIR長官が指定する企業 別途のRRで定める(未確定)
零細事業者(Micro Taxpayer) 義務化の対象外(任意での対応は可能) 該当なし

ここで日系企業にとって注意が必要なのは、輸出型の製造業やPEZA登録企業の多くはGroup 2に分類され、当面は2026年12月31日の期限の対象外になる可能性が高いという点です。一方で、Large Taxpayers Serviceの管轄下にある企業や、既にCAS(Computerized Accounting System)・CBA(Computerized Books of Accounts)を導入している企業は、PEZA登録の有無にかかわらずGroup 1に含まれ得るため、自社がどの区分に該当するかは、輸出比率や登録区分だけでなく、現在の会計システムの登録状況も踏まえて確認する必要があります。

JSON構造化データの要件とEISポータルでの手続きの流れ

電子インボイスは、BIRに登録・認定されたソフトウェアによってシステム生成され、電子的に送信可能な構造化データを生成できるものでなければなりません。データ形式は原則JSON形式とされ(送信を伴わない社内保管等の用途ではXML形式も認められます)、少なくとも54項目の必須データフィールドを含む必要があるとされています。主な項目には、正確なタイムスタンプ付きの一意な文書ID、売り手・買い手の正式名称・住所・BIR登録番号(TIN)、品目・数量等の明細、VAT区分(12%課税・0%ゼロレート・非課税の別)、税込合計額などが含まれます。

実務上の手続きは、おおむね次の流れになります。(1)BIRのEISポータルに登録し、送信許可(Permit to Transmit)を取得する、(2)自社の請求書発行システムをAPI連携させ、構造化データを生成できるようにする、(3)システムが必須項目を満たす電子インボイスを自動生成する、(4)データをBIR EISへ送信して検証を受ける、(5)検証済みのインボイスを取引先に発行する、(6)電子記録を税務調査に備えてデジタル保管する、という6段階です。既存の請求書発行ソフト・会計システムがこの要件に対応できるかどうかは、早めにベンダーへ確認しておくことをおすすめします。

導入費用への追加控除(CREATE MORE法)

電子インボイスシステムの導入には、ソフトウェアライセンス費用やシステム連携費用など相応のコストがかかりますが、CREATE MORE法はこの負担を軽減する税制優遇を用意しています。具体的には、システム導入費用について、零細・小規模事業者は100%、中堅・大企業は50%の追加損金算入(Additional Deduction)が認められます。この控除は、システムが完成した年度、または最終支払いを行った年度に一括で申告する扱いとされています。対象となる企業規模の区分や、控除対象費用の具体的な範囲については、今後発出される実施細則でさらに明確化される可能性があるため、自社が申告する際は最新の運用を確認することをおすすめします。

対応しない場合のペナルティ

電子インボイス義務化への対応を怠った場合、内国歳入法第264-A条に基づくペナルティの対象になり得ます。具体的には、1日あたり10,000ペソ、または年間純利益の1,000分の1(0.1%)のいずれか大きい方の金額が科され、違反が180日を超えて継続する場合はさらに重い措置が取られるとされています。義務化の対象企業に該当するにもかかわらず対応が遅れた場合、期限直前になってシステム整備が間に合わないという事態も想定されるため、対象判定と準備は早めに着手することが望まれます。

なお、電子インボイス制度とは別に、既存の会計システム(CAS)を導入している企業は、従来のPTU(Permit To Use)制度が廃止された後の新しい確認手続き(Acknowledgement Certificate)についても対応が必要です。この点については既存記事「フィリピンにおけるCAS/EISの概要」で詳しく解説しています。

よくある質問

PEZA登録の輸出型製造業ですが、2026年12月31日までに対応する必要がありますか?

輸出企業・RBEは原則としてGroup 2に分類されるため、2026年12月31日の期限の対象外である可能性が高いです。ただし、Large Taxpayers Serviceの管轄下にある場合や、既にCAS・CBAを導入している場合はGroup 1に該当し得るため、自社の登録状況を個別に確認する必要があります。

手書きの領収書やExcelで作成した請求書は今後使えなくなりますか?

対象企業については、紙の請求書をスキャンしただけのものは電子インボイスとして認められません。BIR登録・認定のソフトウェアによるシステム生成が必要です。ただし零細事業者や対象外の企業は、当面は従来の方式を継続できます。

JSON形式のデータを自社で用意するのは難しそうですが、どうすればよいですか?

多くの場合、既存の会計・請求書発行ソフトのベンダーがBIR EIS対応のアップデートを提供する見込みです。自社システムがAPI連携に対応できるか、早めにベンダーへ確認することをおすすめします。

CREATE MORE法の追加控除は自動的に適用されますか?

自動適用ではなく、システム完成年度または最終支払い年度の申告時に自社で計上する必要があります。対象費用の範囲や企業規模の区分について、実施細則を確認したうえで申告することをおすすめします。

まとめ・専門家への相談

フィリピンの電子インボイス義務化は、対象企業にとって2026年12月31日までに残された準備期間が限られている一方、自社がGroup 1・Group 2のどちらに該当するかによって緊急度が大きく異なります。日系企業の多くを占めるPEZA登録の輸出型企業は当面Group 2に分類される可能性が高いものの、会計システムの登録状況次第では前倒しでの対応が必要になるケースもあります。自社の対象区分の判定やシステム対応の進め方については、個別の状況に応じた確認が必要になるため、専門家への相談をおすすめします。カメリアコンサルティングでは、日系企業の電子インボイス対応・会計システム移行の実務支援にも対応しています。

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執筆・監修:日比野和樹

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