フィリピン電子インボイス義務化の2026年12月31日期限|対象企業の判定・PTI取得とEIS認証の手順・顧客への電子送信要件(RR 11-2025 / RMC 98-2026)

フィリピンでは2026年12月31日までに、対象企業は、BIRに登録・承認されたシステムで電子インボイスを発行できる状態にしなければなりません(RR 11-2025、RR 26-2025、RMC 98-2026)。期限は当初の2026年3月14日から延長されましたが、2026年9月22日のRMC 98-2026でも12月31日のまま維持され、再延長はされていません。さらにRMC 98-2026は、PTI(Permit to Issue)の取得と、PTI発行から6ヶ月以内のEIS認証、そして顧客へのデジタル送信という、従来の規則にはなかった要件を示しました。本記事では、対象企業の判定、手続きの順番、電子インボイスとして認められる条件、導入費用の追加控除を整理します。

この記事の要点

  • 期限は2026年12月31日のまま(RR 26-2025で延長、RMC 98-2026でも維持)。再延長は発表されていない
  • 対象は、eコマース・インターネット取引事業者(零細事業者を除く)、Large Taxpayers Service管轄企業、EOPT法上の大規模納税者(年間売上高10億ペソ以上が目安)、電子インボイス機能付きCAS・CBA・請求書発行ソフトの利用企業など
  • 輸出企業、優遇税制の適用を受ける登録企業(RBE)、POS利用企業は、別途の歳入規則で対象となる予定(今回の期限の対象外)
  • 手続きの順番は、PTI(Permit to Issue)の取得 → 電子インボイスの発行 → PTI発行から6ヶ月以内にEIS認証の取得。送信許可(PTT)は、電子売上報告の開始が通知されたときに必要
  • Excel・Wordなどで手作業で作った請求書は電子インボイスと認められない。顧客へのデジタル送信と、BIRへのデータ送信(JSON)に対応している必要がある
  • 導入費用は、零細・小規模事業者は100%、中規模・大規模納税者は50%の追加控除(1回限り)

最終更新日:2026年10月。RMC 98-2026(2026年9月22日公表)の内容を反映しています。PTIの申請様式などは今後の通達で示される予定のため、随時更新します。

フィリピンの税務全体の位置づけについては「フィリピンの税務完全ガイド」もあわせてご参照ください。

目次

何が義務化されるのか(RR 11-2025・RR 26-2025・RMC 98-2026)

RR 11-2025は、CREATE MORE法(RA 12066)を踏まえ、構造化された電子データとして電子インボイスを発行することを、対象企業に義務づける規則です。紙の請求書をスキャンした画像やPDFにしただけのものは、電子インボイスとして認められません。初期の対応期限は2026年3月14日でしたが、RR 26-2025により2026年12月31日に延長されました。

電子インボイスの発行義務(税法第237条)と、BIRのEIS(Electronic Invoicing System)への売上データの電子送信義務である「電子売上報告」(税法第237-A条)は、別個の義務です。電子売上報告は、BIRが実施方針やガイドラインを別途公表した後に、対象企業に求められます。

自社は対象になるか

2026年12月31日が期限となるのは、次の納税者です(零細事業者は義務の対象外です)。

区分 対象 期限
2026年12月31日が期限の対象 eコマース・インターネット取引事業者(零細事業者を除く)/Large Taxpayers Service管轄企業/EOPT法上の大規模納税者(目安:年間売上高10億ペソ以上)/電子インボイス機能付きCAS・CBA(会計記録つき)または請求書発行ソフトの利用企業/BIR長官が指定する企業 2026年12月31日
別途の歳入規則で対象となる予定 物品・サービスの輸出を行う企業、優遇税制の適用を受ける登録企業(RBE)、POSシステム利用企業(BIRがデータの保存・処理システムを構築し次第) 未定
零細事業者(Micro Taxpayer) 義務の対象外(任意で導入できる) 該当なし

日系企業で注意が必要なのは、輸出型の製造業やPEZA登録企業は、今回の期限の対象外になる可能性が高いものの、すでにCAS・CBAを導入している企業や、EOPT法上の大規模納税者に当たる企業は、PEZA登録の有無にかかわらず対象に含まれ得る点です。輸出比率や登録区分だけでなく、会計システムの登録状況と、EOPT上の納税者区分もあわせて確認してください。区分が上位に変わった場合も、再分類から6ヶ月未満の期間で新しい要件に対応する義務は生じない、とされています。

手続きの順番:PTI取得 → 発行 → EIS認証

RMC 98-2026により、手続きは次の順番になります。

  1. PTI(Permit to Issue)Electronic Invoiceの取得:電子インボイスを作成・発行する前に、登録先のRDO(Large Taxpayerの場合はLT Office)へ申請します。BIRは、書類がそろった日から20営業日以内に要件適合性を判定します。承認されると、承認されたソフトウェア・システムと適用範囲を明記したPTIが発行されます。
  2. 電子インボイスの発行:PTIを取得したシステムで、構造化された電子フォーマットのインボイスを生成し、顧客にデジタル形式で送信します。
  3. EIS認証(EIS Certification)の取得:売上データを電子的に抽出・処理し、BIRへ送信できるシステムであることを検証する認証です。PTIの発行日から6ヶ月以内に、EIS Certification Portalで取得します。期限内に取得しないと、PTIの取消事由になります。

送信許可(PTT:Permit to Transmit)は、電子売上報告の要件への対応をBIR長官が通知・指示したときに限り必要になります。現時点では、PTIの具体的な申請様式、添付書類、申請方法は別途の通達で示される予定で、2026年10月7日時点では十分な情報が公表されていません。申請から20営業日の審査期間を考えると、期限までのスケジュールは非常にタイトです。早めにベンダーと相談し、準備を始めることをおすすめします。

PTIは、本店と各支店のそれぞれに対して発行されます(PTI番号は同一で、支店を明示します)。支店ごとに異なるシステムを使っている場合は、システムごとに個別のPTIが必要です。また、システム名・プラットフォーム・中核的な内容が変わる場合や、別のシステムへ移行する場合は、新しいPTIまたは修正版PTIが必要になります。登録した支店がある場合は、対象となる事業活動をどの支店が行っているかにかかわらず、本店とすべての支店が電子インボイスを発行する必要があります。

電子インボイスとして認められる条件

RMC 98-2026では、次の3つをすべて満たす請求書だけが電子インボイスとして認められます。

  • 登録・承認・認定を受けた会計ソフトウェアまたは請求書発行システムが、構造化された電子フォーマットで生成する
  • 電子メール、オンライン閲覧、QRコード、モバイルアプリ、ウェブプラットフォームなどで、顧客にデジタル形式で送信される(顧客へのデジタル送信は、RR 11-2025の定義にはなかった要件です)
  • インボイスのデータを、電子売上報告のために電子的に抽出・処理し、BIRへ送信できる

Microsoft Word、Excel、Google ドキュメント、Google スプレッドシートなどで手作業で作った請求書は、有効な電子インボイスとは認められません。ERPなどから作った請求書を紙に印刷して交付する運用も、そのシステムが電子的な発行・送信やBIRへのデータ送信に対応していなければ、電子インボイスではなく、単にシステムで作成された請求書として扱われます。なお、買い手から求められたときは、売り手は紙の写しを提供する必要があります。

データ形式は、BIRのEISが売上データの送信にJSON形式を定めています。社内では別の構造化形式を使っても構いませんが、必要な売上データをBIRが定めるJSON形式に変換し、送信できることが条件です。JSONで求められる情報は、主として税法第113条とRR 7-2024で請求書への記載が義務づけられている最低限の情報に、値引き・源泉税などの追加情報を加えたものです。

発行済みの電子インボイスは、削除・変更・修正できません。金額を減らすときはクレジットノート(クレジットメモ)、増やすときは新しい電子インボイスを発行します。システム障害、停電、通信障害などで電子インボイスを発行できないときは、BIRの承認(ATP)を受けたマニュアル請求書を発行し、復旧後に、そのマニュアル請求書の番号を記載した電子インボイスに置き換えます。

導入費用への追加控除(CREATE MORE法)

CREATE MORE法は、電子インボイス・電子売上報告システムの導入費用に対して、通常の損金算入に加えて追加控除を認めています。零細・小規模事業者は費用の100%、中規模納税者(年間売上2,000万ペソ以上)と大規模納税者(年間売上10億ペソ以上)は50%です。追加控除を適用できるのは1回限りで、電子売上報告システムの輸入は免税とされています。対象となる費用の範囲や計上の時期は、今後の実施細則で明確になる可能性があるため、申告の際は最新の運用を確認してください。

対応しない場合のリスク

PTIを取得せずに発行した請求書や、必要な要件を満たさない請求書は、電子インボイスとして認められません。システムで作成された請求書として、電子インボイスではない請求書のルールに従って扱われます。また、PTIの発行日から6ヶ月以内にEIS認証を取得しないと、PTIが取り消されます。電子売上報告の開始後は、売上データの送信漏れや遅延にペナルティが課されることが規則上予定されています。対象企業は、期限直前になってシステム整備が間に合わないことがないよう、早めに準備を始めることが望まれます。

なお、電子インボイスのPTIは、CASのPTU(Permit to Use)や、CASの登録確認であるAcknowledgement Certificate(AC)とは別のものです。PTUやACは、システムを使用することを認めるもので、それ自体が電子インボイスを発行する権限を与えるものではありません。CASの登録については、既存記事「フィリピンにおけるCAS/EISの概要」で解説しています。

電子インボイスの要件とは別に、2026年10月1日公表のRR 6-2026により、控除可能源泉徴収税(CWT)の対象となる取引では、請求書にCWT額を独立した項目として表示することが新たに義務づけられました(発効は2026年10月16日の見込み)。請求書のシステム改修を行う際は、あわせて確認しておくことをおすすめします。

よくある質問

PEZA登録の輸出型製造業ですが、2026年12月31日までに対応する必要がありますか?

輸出を行う企業と優遇税制の登録企業(RBE)は、別途の歳入規則で対象となる予定のため、今回の期限の対象外である可能性が高いです。ただし、Large Taxpayers Serviceの管轄下にある場合、EOPT法上の大規模納税者に当たる場合、電子インボイス機能付きのCAS・CBAを使っている場合などは、対象に含まれ得ます。自社の状況を個別に確認してください。

手書きの領収書やExcelで作成した請求書は今後使えなくなりますか?

対象企業については、Excel・Wordなどで手作業で作った請求書は、電子インボイスとして認められません。登録・承認されたシステムが、構造化データで生成し、顧客にデジタル形式で送信する必要があります。零細事業者など対象外の企業は、当面は従来の方式を続けられます。

PTIとEIS認証は、どちらを先に取りますか?

PTIが先です。PTIを取得してから電子インボイスを発行し、PTIの発行日から6ヶ月以内にEIS認証を取得します。送信許可(PTT)は、電子売上報告の開始が通知されたときに必要になります。

JSON形式のデータを自社で用意するのは難しそうですが、どうすればよいですか?

自社開発のシステム、市販のソリューション、電子インボイスサービスプロバイダー(ESP)のサービスのいずれも利用できます。ESPの認定要件は、2026年10月12日付のRMC 110-2026で定められました(「ESPの認定ルール」)。自社の会計・請求書発行ソフトがBIRの要件に対応できるか、早めにベンダーへ確認してください。

CREATE MORE法の追加控除は自動的に適用されますか?

自動適用ではなく、自社の申告で計上します。追加控除は1回限りです。対象費用の範囲について、実施細則を確認したうえで申告することをおすすめします。

まとめ・専門家への相談

電子インボイスの期限は2026年12月31日のまま維持されており、PTIの申請様式などの細則がまだ出そろっていない中で、準備できる期間は限られています。日系企業の多くを占めるPEZA登録の輸出型企業は、今回の期限の対象外になる可能性が高いものの、CAS・CBAの利用状況やEOPT上の納税者区分によっては、前倒しでの対応が必要になることがあります。自社の対象区分の判定やシステム対応の進め方は、個別の状況に応じて確認が必要です。カメリアコンサルティングでは、日系企業の電子インボイス対応・会計システム移行の実務支援にも対応しています。

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執筆・監修:日比野和樹

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