資本市場効率化促進法(CMEPA/RA 12214)で日系子会社の何が変わったか|利子の源泉税20%・株式発行の印紙税0.75%・株式報酬の課税

資本市場効率化促進法(CMEPA、共和国法第12214号)は、2025年5月29日に署名され、7月1日に発効しました。主に受動的所得と資本市場取引の税制を簡素化する法律ですが、日系子会社にも、利子の最終源泉税、新規株式発行の印紙税、ストックオプションなどの株式報酬の課税、物品税といった項目で影響があります。本記事では、CMEPAの主な改正点を、実務への影響の視点で整理します。

目次

この記事の要点

  • CMEPAは2025年7月1日以降の取引に適用される
  • 利子所得の最終源泉税率が、金融商品の性質や保有期間にかかわらず20%に統一された(フィリピンで事業を行っていない非居住者を除く)
  • 株式の新規発行に対する印紙税が、1%から0.75%に引き下げられた
  • ストックオプション、譲渡制限付き株式ユニット(RSU)などの株式報酬は、権利行使時に総所得に含まれる(税法本体にも明記された)
  • 上場株式の株式取引税(STT)は、0.6%から0.1%に引き下げられた
  • 雇用主がPERA(個人の退職金運用口座)に拠出した金額(上限内)に、50%の追加控除
  • 自動車の物品税の免除対象から、ピックアップ車が除外された

日系子会社に影響が大きい改正点

1. 株式の新規発行の印紙税:1%から0.75%へ

株式の新規発行にかかる印紙税は、2018年以降は1%(額面株式は額面、額面のない株式は実際の発行価額が基準)でしたが、CMEPAにより0.75%になりました。現地法人の設立時の資本金の払込みや、増資の際の費用に影響します。会社設立の流れは「フィリピン会社設立の完全ガイド」をご参照ください。

2. 利子所得の最終源泉税:20%に統一

これまで、利子所得には、商品ごとに異なる税率が適用されていました。たとえば、銀行預金や信託基金の利子には一般に20%、特定の政府証券や長期預金には優遇、拡大外国通貨預金制度の外貨預金の利子には15%の最終税率が適用されていました。CMEPAにより、これらは一律20%の最終源泉税に統合されました。ただし、フィリピンで事業を行っていない非居住の外国人・外国法人は除きます。

預金や社債などで運用しているフィリピン子会社は、利子の税引後の手取りが変わる可能性があります。源泉税率の全体像は「フィリピン源泉税(EWT・FWT)税率一覧表」にまとめています。

3. 株式報酬(ストックオプション・RSU):権利行使時に総所得に算入

CMEPAは、税法第32条の「総所得」に含まれる項目として、ストックオプションやRSUなどの株式報酬を追加しました。権利行使時に総所得に含まれます。この取扱いは、2022年のRR 13-2022でも説明されていましたが、今回、税法自体に規定されました。日本の親会社が、フィリピン子会社の従業員にストックオプションやRSUを付与している場合は、権利行使時の給与所得としての課税と、源泉徴収の対応を確認してください。個人所得税の全体像は「フィリピン個人所得税ガイド」をご参照ください。

4. 雇用主のPERA拠出:50%の追加控除

雇用主が、2008年のPERA法に基づく退職金運用口座(PERA)に実際に拠出した金額(法律で定める上限内)について、従業員全員のPERA口座に拠出することを条件に、50%の追加控除が認められます。福利厚生として、PERAを導入する場合の検討材料になります。

5. 自動車の物品税:ピックアップ車が免除から除外

2018年のTRAIN法以降、自動車の物品税は大幅に引き上げられましたが、EVとピックアップトラックは免除されていました。CMEPAで、ピックアップトラックが免除の対象から外れました。EVの免除と、ハイブリッド車の物品税が通常税率の50%に軽減される扱いは、変更されていません。輸入の物品税については「関税・物品税の実務」もご参照ください。

その他の主な改正点

項目 改正の内容
受動的所得の定義 納税者が能動的に事業や取引を行わずに得る所得で、VATの対象にならないものを定義として追加
非上場の外国法人株式の譲渡益 居住国民・内国法人に、15%のキャピタルゲイン税
満期が5年超の債券等の売却・償還益 総所得に含める項目に追加
プロジェクトボンドの利子・売却益、UITFの持分の償還益 総所得から除外する項目に追加
上場株式の株式取引税(STT) 0.6%から0.1%に引き下げ

実務で確認しておくこと

  1. 増資・新規設立の予定がある場合:印紙税の率が0.75%になっていることを前提に、費用を見積もる
  2. 利子を受け取っている場合:預金の種類を問わず、最終源泉税20%で処理されているか
  3. 株式報酬を付与している場合:権利行使時の課税と源泉徴収の運用を整理する
  4. 福利厚生の見直し:PERAの追加控除を使えるかを検討する
  5. 社用車の購入・輸入の予定がある場合:ピックアップ車の物品税の扱い

よくある質問

CMEPAはいつから適用されますか?

2025年7月1日に発効し、同日以降の取引に適用されます。

預金の利子の税率は、いくらになりましたか?

フィリピンで事業を行っていない非居住者を除き、利子所得の最終源泉税は一律20%になりました。

設立時の資本金の払込みにかかる印紙税は、下がりましたか?

株式の新規発行にかかる印紙税は、1%から0.75%に引き下げられました。

日本の親会社が付与したストックオプションも、対象ですか?

CMEPAは、ストックオプションやRSUなどの株式報酬を、権利行使時に総所得に含めると、税法に規定しました。付与の枠組みごとに、課税のタイミングと源泉徴収を整理してください。

まとめ

CMEPAは、資本市場の税制を整えることが主な目的の法律ですが、日系子会社にとっても、増資の印紙税、利子の源泉税、株式報酬の課税、ピックアップ車の物品税など、実務に関わる項目が含まれます。自社の取引に当てはまる項目を確認してください。カメリアコンサルティングでは、日系企業のフィリピンでの税務・会計の実務を支援しています。

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執筆・監修:日比野和樹

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