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電子インボイスのサービス提供者(ESP)の認定ルール|RMC 110-2026で何が決まったか、グループ会社のシステムを使う日系子会社の注意点
BIRは、2026年10月12日付のRMC 110-2026で、電子インボイスのサービス提供者(ESP:Electronic Invoicing Service Provider)の認定ルールを定めました(即日有効)。ESPは、納税者のために、電子インボイスの発行・保存・BIRへの送信などを行う事業者です。RMC 98-2026では、ESPのガイドラインは別の通達で定めるとされていましたが、今回その中身が示されました。2026年12月31日の電子インボイスの期限に向けて、外部のサービスを使うか、自社のシステムで対応するかを決める際に、確認しておくべき内容です。
この記事の要点
- 自社専用か、別法人への提供か:納税者が自社で開発した、または納税者がライセンスを受けて自社の環境で運用する、1社とその登録支店だけが使うシステムは対象外。関係会社・子会社など別の法人に提供するシステム・サービスは、BIRが免除しない限りESPとして扱われる
- ESPの認定と、納税者の手続きは別:ESPの認定は、納税者自身のCAS・POSの登録や、PTI(Permit to Issue)・EIS認証の代わりにならない
- ESPを使っても納税者の責任は残る:ESPだけが原因の送信の失敗と立証され、納税者が相当の注意・適時の報告・所定の代替手続きを満たした場合に限り、その送信の失敗について行政上の罰則は課されない
ESPとは
RMC 110-2026は、ESPを「フィリピンで設立された、または事業の許可を受けた法人で、納税者に、電子インボイスの発行、売上報告、システム連携、検証、送信、保存、検索、照合、データ移行、監査対応のサービスを提供する者」と定義しています。ESPは、フィリピン国内に、権限のある代表者と、技術・コンプライアンス・データ保護・セキュリティの責任者を置く必要があります。
認定を受けたESPは、電子インボイスの発行と売上報告を一貫して支援します。具体的には、BIRの要件に合った構造化データでの電子インボイスの作成・保存、必要とされる場合の「PTI Electronic Invoice Number」の表示、顧客である納税者のPTIの申請・更新の手続きの支援、BIRとのAPI連携・認証・本番前テストの代行(納税者の書面での承認が前提)などです。顧客のPTIの保有者はその納税者で、ESPはそのPTIについて財産的な権利を持ちません。
なお、電子インボイスの発行と、電子売上データの送信は、関連はあるものの別の義務で、どこまで対応が必要かは、納税者ごとの義務によって決まります。電子インボイスの期限と、PTI・EIS認証の手順は「フィリピン電子インボイス義務化の2026年12月31日期限」で説明しています。
日系子会社が注意すべき点:グループ会社が提供するシステム
| システム | 扱い |
|---|---|
| 納税者が自社で開発した、または納税者がライセンスを受けて自社の環境で運用する、1社とその登録支店だけが使うシステム | 対象外(CAS・POSなどの既存の登録ルールに従う) |
| 関係会社・子会社・関連者・フランチャイジー・顧客など、別の法人に提供するシステム・サービス | BIRが免除しない限り、ESPとして扱う |
グループ内であっても、別の法人に電子インボイス関連のシステム・サービスを提供する場合は、BIRによる免除がない限りESPとして扱われます。提供者は、管轄のRDOまたはLTSに書面で免除を申請でき、BIRは20営業日以内に判断します。
日本本社やアジアの統括会社が、フィリピン子会社に請求書発行の仕組みを提供している場合は、この点の確認が必要です。ただし、ESPの定義は「フィリピンで設立または事業の許可を受けた法人」とされており、国外の提供元にこのルールが具体的にどう適用されるか、免除の申請の方法などは、RMC 110-2026では明示されていません。また、グループ共通のERPを使っているだけで、直ちに電子インボイス関連のサービスの提供に当たるとも限りません。どの法人がシステムを運用・提供しているかを整理したうえで、早めに対応を検討してください。
認定の主な要件
- 認定の範囲:認定は、ソリューション、バージョン、モジュール、インターフェース、導入構成ごとに行われる。重要な変更には事前の承認が必要で、重要な変更や重大な事故の後には再検証が必要。重要でない更新には再認定は不要
- 手続き:書類の確認、適格性と財務能力の審査、技術構成とデータの流れの審査、データ保護・データの保管場所(大統領令第119号)・サイバーセキュリティの評価、システムのデモ、相互運用性とエンドツーエンドの送信テスト、負荷・障害復旧などのテストを、すべて通過する必要がある。書類だけでは認定されない
- セキュリティ:ISO/IEC 27001・27017・27018、SOC 1・SOC 2またはそれに相当する認証、ソースコードレビューと脆弱性診断・侵入テストなど
- 実績:直前3年間の各年について、運用・支援したシステム全体で、年間500万件以上の取引を処理し、年間1,000以上のアクティブな利用者・顧客アカウントを支えられる能力
- 開示:実質的支配者、役員、主要な技術者、委託先、クラウド事業者などを開示し、重要な委託先などを変える前に更新する
- 料金:料金は透明で、サービスに見合ったものとし、顧客の受け入れ前にすべて開示する。開示されていない費用や、文書で裏付けたコストを超える解約・データ取り出し・移行の費用、事業者の変更や記録の取り出しを妨げる契約条件は認められない(認定の条件)
- 有効期間:5年間。毎年の確認と継続的な監視があり、満了の60日以上前に更新する。認定が失効すると、そのシステムを使う納税者のPTIが停止される場合がある
ESPの主な義務
- 顧客である納税者の、BIRへの登録などを確認してから受け入れる
- 電子インボイスと売上データは、原則としてリアルタイムまたはほぼリアルタイムで送信し、取引日から3暦日以内とする。すぐに送信できない場合は、データを安全に保存し、システムの復旧から3暦日以内に、欠落・改変・重複なく再送信する
- 改ざんできない、時刻の同期した監査ログを残し、BIRがアクセスできるようにする
- 重大なセキュリティ・完全性・可用性・送信の事故は、24時間以内に管轄のRDOとLTSに報告する
- サービスの中断中は、手作業での請求書の発行を支援し、復旧後に電子インボイスとひも付ける
- 売上一覧(SLS)の自動作成機能を提供する
データは誰のものか
- 帳簿・記録・請求書・元データの所有と法的な責任は、納税者に残る
- BIRに送信された、またはBIRのために保存された電子インボイス・売上データは、BIRの管理下にある公的な税務記録となる。ESPは、所有権や知的財産権などを持たない
- ESPは、BIRに、完全・直接・継続的なアクセスを提供する。BIRの求めに応じ、所定の形式の要約は1営業日以内、取引ごとの明細は3営業日以内に提出する
- ESPは、契約上の争い、料金の未払い、解約、事業者の変更を理由に、データへのアクセスを止めたり、削除したりしてはならない。納税者・BIR・他の認定ESPへのデータ移行ができるようにしておく
- ESPは、データを販売・広告・与信・競合分析など、認められた目的以外に使ってはならない
ESPを使うときの納税者の責任
ESPを使っても、正しい請求書を発行し、帳簿を保存し、申告・売上報告・納税を行う法律上の責任は、納税者に残ります。一方で、送信の失敗が、認定を受けたソリューションのESPだけが原因であると立証され、納税者が相当の注意を払い、事故を適時に報告し、所定の代替手続きに従っていた場合に限り、その送信の失敗について、行政上の罰則は課されません(正しい税額の賦課・徴収には影響しません)。
実務で確認しておくこと
- 自社の対応方法を決める:自社のシステムで対応するか、外部のESPを使うか
- 外部のESPを使う場合:BIRの認定を受けているか、認定の対象のソリューション・バージョン・構成かを確認する
- グループのシステムを使う場合:提供元が別の法人ならESPとして扱われる可能性がある。免除の申請の要否を、提供元と一緒に確認する
- 契約を確認する:料金、解約・データ移行の条件、障害時の対応、データの取扱いが、RMC 110-2026の要件に合っているか
- PTIとEIS認証は納税者ごとに必要:ESPは手続きを支援できるが、ESPの認定で代わりにはならない
よくある質問
日本本社のERPを使っている場合も、ESPの認定が必要ですか?
納税者が自社で開発した、または納税者がライセンスを受けて自社の環境で運用する、1社とその登録支店だけが使うシステムは対象外です。一方、別の法人に電子インボイス関連のシステム・サービスを提供する場合は、BIRが免除しない限りESPとして扱われます。国外の提供元への具体的な適用は明示されていないため、システムの運用・提供の形を整理して確認してください。
ESPの障害で送信が遅れたら、罰則はありますか?
送信の失敗がESPだけが原因と立証され、納税者が相当の注意・適時の報告・所定の代替手続きを満たした場合に限り、その送信の失敗について行政上の罰則は課されません。
ESPを使えば、PTIは不要ですか?
いいえ。ESPの認定は、納税者自身のPTIとEIS認証の代わりにはなりません。
まとめ
RMC 110-2026で、電子インボイスを外部のサービスで対応する場合の前提となる、ESPの認定ルールが示されました。特に、別の法人に提供されるシステムもESPとして扱われ得る点は、グループのシステムを使う日系子会社にとって見落としやすいポイントです。2026年12月31日の期限に向けて、自社の対応方法と、システムの提供元の扱いを早めに確認してください。カメリアコンサルティングでは、日系企業の電子インボイス対応と、会計システムの移行を支援しています。
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執筆:五十嵐碧/監修:日比野和樹
