【2026年最新】SaaS・クラウド利用料に12%のVAT|海外ベンダー・日本親会社経由のコストシェアリングでの申告(1600-VT)と注意点

海外のベンダーが提供するSaaS・クラウド・オンライン広告などの利用料には、フィリピンで12%のVATがかかります。2025年6月2日から適用されており、フィリピンの企業(買い手)がB2B取引では、リバースチャージでVATをBIRに直接納付します。日本の親会社が契約して費用を子会社に配賦する「コストシェアリング」も対象で、2026年6月2日のRMC 59-2026で明確になりました。本記事では、日系子会社の経理担当者が押さえるべき実務を整理します。

目次

この記事の要点

  • 根拠は、デジタルサービスVAT法(RA 12023、2024年10月18日発効)とその施行規則RR 3-2025。非居住デジタルサービス提供者(NRDSP)への12%のVATは、2025年6月2日から適用
  • 対象には、クラウド、データストレージ、ウェブホスティング、コミュニケーション・コラボレーションツール、データ分析、AI、サイバーセキュリティ、VPNなどが含まれる
  • B2B取引(買い手がフィリピンで事業を行う者)では、買い手がリバースチャージでVATを計算し、BIR Form 1600-VTを電子的に提出して納付する。買い手がVAT登録されているかどうかにかかわらず、1600-VTを使う
  • 1600-VTは、VAT登録事業者の仕入VAT控除の証憑にもなる
  • 日本の親会社が海外ベンダーと契約するコストシェアリングも課税対象。子会社がB2Bとして申告・納付する。親会社が、NRDSPとして登録義務を負う場合がある
  • 租税条約の特典は所得税が対象で、VATには適用されない
  • 登録事業(PEZAなど)に直接帰属するサービスは、VAT免税になる場合がある

対象になるサービスは?

RR 3-2025は、デジタルサービスを、情報技術を使ってインターネットなどの電子ネットワーク上で提供され、提供が本質的に自動化されているサービスと定義しています。例として、クラウド、ITインフラ(データストレージ、ウェブホスティング、決済システム)、デジタルマーケティング・分析、コミュニケーション・コラボレーションソフト、eラーニング、データ分析、AI、サイバーセキュリティ、データ暗号化(VPNなど)が挙げられています。

日系子会社が日常的に使うSaaS(会計、ERP、コミュニケーション、設計ツールなど)や、オンライン広告は、広く対象になり得ます。デジタルサービスの範囲は今後も議論になる可能性があるため、契約ごとに確認してください。

B2B:買い手がリバースチャージで納付(1600-VT)

海外のベンダーが、フィリピンで事業を行う企業にサービスを提供する取引(B2B)では、次のように処理します(RMC 47-2025)。

  1. 買い手(フィリピンの企業)が、リバースチャージで12%のVATを計算します
  2. BIR Form 1600-VTを電子的に提出し、VATをBIRに納付します
  3. 買い手がVAT登録事業者の場合は、1600-VTが、仕入VATを控除するための証憑になります

ベンダーの請求書にVATが含まれていなくても、買い手側でVATの申告・納付が必要になる点が、実務上の見落としやすいポイントです。ベンダーは、取引日、参照番号、買い手の情報(TINを含む)、取引の概要、VAT込みの合計額を記載したインボイスを出す必要があります。

B2C:ベンダー側が申告・納付

買い手がフィリピンで事業を行っていない消費者の場合は、ベンダー(NRDSP)が、四半期ごとにVATを申告・納付します(Form 2550-DS)。日系子会社が直接関わるのは、主にB2Bです。

日本の親会社を経由するコストシェアリングは?

RMC 59-2026(2026年6月2日公表)は、次のようなコストシェアリングを取り上げました。海外のベンダーが提供するデジタルサービスを、日本の親会社が契約して費用を支払い、フィリピンの子会社が最終的に利用するケースです。

  • 課税の有無:支払いがコストシェアリング契約を通じていても、RR 3-2025のVAT課税の対象です。フィリピンの子会社が、B2B取引として、リバースチャージで申告・納付します
  • 誰が登録するか:原則として、サービスを提供する海外のサプライヤーがNRDSPです。ただし、サプライヤーが海外関連会社とだけ契約しており、フィリピンの子会社や他のフィリピンの顧客と直接取引していない場合は、サプライヤーの登録は不要です。その場合、日本の親会社が、サービスの提供条件(価格、支払条件など)を直接・間接に設定している、またはサービスの発注・提供に関与していると、親会社がNRDSPとみなされ、BIRへの登録義務を負います
  • 子会社の対応:いずれの場合も、B2B取引なので、フィリピンの子会社がVATの納付義務を負います

親会社がNRDSPとして登録する必要があるかどうかは、グループ内の契約や役割分担によって判断が分かれる可能性があります。契約書とコストの配賦方法を整理したうえで、早めに方針を決めておいてください。

免税になる場合:登録事業に直接帰属するサービス

NRDSPのデジタルサービスが、次のいずれかに直接帰属する場合は、12%のVATの対象になりません(RMC 47-2025)。

  • IPA(PEZAなど)に登録された、輸出型企業・高付加価値の国内市場向け企業などの登録事業
  • 内国歳入法第106条・第108条に定める、輸出志向型企業の輸出活動

PEZA登録企業のVATの全体像は「PEZA登録企業の国内販売VAT12%と買主納付」をご参照ください。なお、VAT免税の取引だけを行っているNRDSPも、BIRへの登録とVAT申告書の提出が必要で、免税売上として申告する必要があります(RMC 59-2026)。

租税条約はVATには使えない

RMC 59-2026は、NRDSPが租税条約に基づく特典の資格証明書(COE)を取得していても、特典の対象は所得税だけであり、VATには適用されないことを明確にしています。VATがゼロレートや免税になるのは、内国歳入法の規定を満たす場合です。

源泉税(所得税)の論点とは別

海外への支払いには、VATとは別に、源泉税(所得税)の論点もあります。日本本社への経営指導料・技術支援料などの源泉税は、RMC 24-2026の4要件テストで判定します(「日本本社への経営指導料・技術支援料は源泉課税されるか」)。同じ支払いでも、VATと源泉税は別々に確認が必要です。

よくある質問

ベンダーの請求書にVATが載っていません。自社で何かする必要がありますか?

はい。B2B取引では、買い手であるフィリピンの企業がリバースチャージでVATを計算し、BIR Form 1600-VTで納付します。

自社がVAT登録していない場合も、1600-VTが必要ですか?

RMC 47-2025は、B2B取引では、買い手がVAT登録されているか否かにかかわらず、1600-VTでVATを申告・納付するとしています。

日本の親会社が一括して契約している場合は、どうなりますか?

コストシェアリングでも、VATの課税対象です。子会社がB2Bとして申告・納付します。親会社は、サービスの条件を設定している、または発注に関与している場合、NRDSPとして登録する義務を負う場合があります。

PEZA登録企業は免税になりますか?

サービスが登録事業に直接帰属する場合は、12%のVATの対象外になります。直接帰属するかどうかは、サービスの内容によって個別に判断します。

租税条約を使えば、VATは軽減されますか?

いいえ。租税条約の特典は所得税が対象で、VATには適用されません。

まとめ

SaaS・クラウド・広告配信などのデジタルサービスは、B2B取引では、フィリピンの買い手がリバースチャージで12%のVATを納付します。日本の親会社を経由するコストシェアリングも対象で、親会社の登録義務の有無は、契約と役割分担によって判断が分かれます。まずは、自社が利用しているデジタルサービスと契約の流れを棚卸しし、1600-VTの申告漏れがないかを確認してください。カメリアコンサルティングでは、日系子会社のデジタルサービスVATの整理と、グループ内の契約・配賦の設計を支援しています。

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執筆・監修:日比野和樹

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