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【2026年最新】フィリピンVAT還付の実務|リスクベース審査(低・中・高)の判定基準と90日ルール、却下されない申請書類の作り方(RMC 115-2024)
フィリピンのVAT還付は、2024年のRMC 115-2024により「リスクベース・アプローチ」に移行し、申請の内容次第で審査の厳しさが大きく変わる仕組みになりました。NSD(証憑不備)比率が申請金額の1%を超える、あるいは売上・仕入明細に不備があると自動的に「高リスク」に分類され、全件検証の対象になります。一方、要件を満たす「低リスク」案件は、書類の完備性チェックのみで還付が推奨される仕組みです。本記事では、リスク区分の基準と、却下・減額されないための申請書類作成のポイントを整理します。
この記事の要点
- RMC 115-2024により、VAT還付申請は「低リスク」「中リスク」「高リスク」の3区分に自動分類される
- 高リスクの主な判定基準は、NSD(証憑不備)比率が申請金額の1%以上であること、または売上・仕入明細に不備・欠落があること
- 低リスク案件は書類の完備性チェック(チェックリスト照合)のみで還付が推奨され、売上・仕入の実地検証は行われない
- 中・高リスク案件にはRMO 23-2023に基づく検証手続きが適用され、中リスクのうちRAFT(架空取引調査)でフラグが立ったが検証対象に選ばれなかった取引は自動的に否認される
- 90日間の処理期間は、書類が完備した状態で申請が受理された時点から起算される(不備があれば起算されない)
- ゼロレレト取引に基づく還付が認められるための6つの技術的要件(VAT登録・ゼロレート取引の実在・仕入税額の発生・ゼロレート売上への直接紐づけ・他の課税仕入への未充当・2年の出訴期間内の申請)を満たす必要がある
最終更新日:2026年9月。RMC・RMOの改正があった場合は随時更新します。
フィリピンの税務全体の位置づけについては「フィリピンの税務完全ガイド」もあわせてご参照ください。
リスクベース・アプローチとは:RMC 115-2024の3区分
従来、VAT還付申請は原則としてすべての取引について実地検証(売上・仕入の突合、証憑の確認等)が行われていましたが、RMC 115-2024により、申請内容に応じて審査の深さを変える「リスクベース・アプローチ」が導入されました。申請は「低リスク」「中リスク」「高リスク」の3区分に臫動的に分類され、区分によって審査手続きが大きく異なります。低リスク案件は、書類が形式的に完備しているかどうかのチェックリスト照合のみで還付が推奨され、売上・仕入取引そのものの検証(RMO 23-2023に基づく実地検証)は省略されます。一方、中リスク・高リスク案件には引き続き実地検証の手続きが適用されます。この仕組みにより、証憑管理が徹底されている企業ほど還付までの期間が短縮される可能性がある一方、証憑不備が多い企業は従来以上に厳格な審査を受けることになります。
「高リスク」に分類される主な基準
高リスクへの分類は、主に次の2つの基準のいずれかに該当した場合に自動的に発生します。第一に、NSD(No Supporting Document、証憑不備)の金額が、申請対象の売上高または還付請求額の1%以上を占める場合です。第二に、売上・仕入明細(スケジュール)に情報の欠落や不備がある場合です。いずれも、申請時点で提出される書類の完成度が直接的にリスク区分を左右する設計になっており、証憑の整理・突合を事前にどれだけ徹底できるかが、審査の厳しさを左右する最大の要因になります。中リスクに分類された案件のうち、BIRのRAFT(Run After Fake Transactions、架空取引調査)プログラムでフラグが立ったにもかかわらず検証対象として選定されなかった取引については、臫動的に否認される扱いになる点にも注意が必要です。
90日間の処理期間はいつから起算されるか
VAT還付の処理期間は法律上90日間とされていますが、この90日は「申請が受理された時点」から起算されるのではなく、「必要書類が完備した状態で処理担当部署に申請が受理された時点」から起算されます。つまり、書類に不備がある状態で申請しても90日のカウントは始まらず、不備の是正・追加提出に要した期間はカウント対象外になります。結果として、実質的な還付までの期間は、申請時点の書類完成度に大きく左右されることになります。還付申請を計画する際は、法定の90日間だけを見込むのではなく、書類の事前チェック・整備に要する期間も含めたスケジュールを組む必要があります。
却下・減額されない申請書類を作るための6つの要件
ゼロレート取引に基づくVAT還付(またはタックスクレジット)が認められるためには、裁判例の積み重ねにより確立された次の6つの技術的要件を満たす必要があるとされています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①VAT登録 | 申請時点でBIRに有効なVAT登録(Certificate of Registration)を有していること |
| ②ゼロレート取引の実在 | 対象期間中に実際にゼロレート取引(内国歳入法上の根拠を伴う)が行われたことを示すこと |
| ③仕入税額の発生 | VAT登録仕入先・輸入・非居住者からの役務提供等から、実際に仕入税額が発生していること |
| ④ゼロレレト売上への直接紐づけ | 仕入税額がゼロレレト売上に直接起因することを示すこと(他の取引も行う企業は按分計算が必要) |
| ⑤他の課税仕入税額への未充当 | 還付を求める仕入税額が、その後の課税期間で他の産出税額(Output VAT)と相殺されていないこと |
| ⑥出訴期間内の申請 | 該当する課税四半期から2年間の出訴期間内に申請していること |
実務上、還付が却下・減額される最も多い原因は、請求書・領収書の記載不備(申請者名・TIN・登録住所・VATの区分表示の欠落や、原本と認証謄本の記載不一致)と、仕入税額のゼロレート売上への按分計算の誤りです。特に、複数の事業(課税取引と免税・ゼロレート取引が混在するケース)を行っている企業では、仕入税額をどの売上に対応させるかの按分方法が争点になりやすいため、按分計算の根拠を明確に文書化しておくことが重要です。PEZA企業のVATゼロレート適用については「PEZA企業の国内販売とVATの買主納付制度」もあわせてご参照ください。
よくある質問
低リスクに分類されるにはどうすればよいですか?
NSD(証憑不備)比率を1%未満に抑え、売上・仕入明細に欠落や不備がない状態で申請することが基本です。日頃からの証憑管理・突合作業の徹底が、リスク区分を左右する最大の要因になります。
中リスクと高リスクの違いは何ですか?
いずれもRMO 23-2023に基づく検証手続きの対象になりますが、中リスク案件のうちRAFT(架空取引調査)でフラグが立ちながら検証対象に選定されなかった取引は自動的に否認される点が異なります。
90日を過ぎても還付されない場合はどうすればよいですか?
まず、90日のカウントが書類完備の時点から正しく起算されているかを確認する必要があります。書類不備を理由に起算が遅れているケースも多いため、申請時の受理状況を確認したうえで、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
複数の事業を行っている場合、仕入税額の按分はどう計算しますか?
ゼロレレト売上に直接起因する仕入税額とそれ以外を区分し、直接紐づけできない共通費用については、売上高比率等の合理的な基準で按分するのが一般的です。按分方法の根拠を文書化しておくことが、審査時の説明力を高めます。
出訴期間の2年はいつから数えますか?
該当するゼロレート取引が行われた課税四半期の末日から2年間が出訴期間の目安とされています。期限管理を誤ると還付請求権自体を失うため、四半期ごとに申請可否を検討することをおすすめします。
まとめ・専門家への相談
VAT還付のリスクベース・アプローチは、証憑管理が徹底されている企業にとっては審査の迅速化というメリットをもたらす一方、書類の不備がそのまま高リスク判定・厳格な審査につながる仕組みでもあります。還付申請を検討する際は、6つの技術的要件を満たしているかの確認と、証憑の事前整理を徹底することが、却下・減額のリスクを抑える最善の方法です。カメリアコンサルティングでは、日系企業のVAT還付申請の書類整備・リスク区分対策の支援にも対応しています。
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執筆・監修:日比野和樹
