フィリピンの記帳代行・税務顧問の費用相場|内製と外注の損益分岐点を人件費・リスクコストで比較【2026年版】

フィリピンで記帳代行・税務顧問を外部に委託する場合の費用は、依頼先の種類によって大きく異なり、ローカルの小規模事務所なら月額数千ペソから、日本語で本社報告まで対応する日系ファームでは月額3万〜6万ペソ程度が一つの目安です。一方、経理担当者を自社で雇用する場合、給与に加えて13か月給与や社会保険の事業主負担がかかり、CPAを雇用すれば総人件費は月額9万ペソを超えます。本記事では、依頼先別の費用相場と、内製・外注の損益分岐点を人件費とリスクコストの両面から比較します。

この記事の要点

  • 記帳代行の相場は、ローカルの小規模事務所で月額数千〜1万5,000ペソ程度、会計ソフト込みのローカル事務所で月額1万5,000〜2万ペソ程度から、日系ファームで月額3万〜6万ペソ程度が目安
  • 料金を左右する主な要因は、取引件数、VAT登録・PEZA登録の有無、給与計算の対象人数、日本本社向けレポーティングの有無
  • 経理担当者を内製する場合、給与のほかに13か月給与(年1か月分)とSSS・PhilHealth・Pag-IBIGの事業主負担がかかり、総人件費は給与の約1.15〜1.2倍になる
  • 経理スタッフ(給与25,000ペソ)1名の内製は年間約36.5万ペソで、外部委託(年間約38万〜39万ペソ・税別)と費用面ではほぼ同水準だが、有資格者のレビューや税務調査対応は含まれない。CPA(給与80,000ペソ)を雇用すると年間約111万ペソで、外部委託の約3倍になる
  • 源泉徴収漏れや申告遅延による加算税(25%)・利息(年12%)といったリスクコストも、内製・外注の比較に含めるべき

最終更新日:2026年10月。料金相場・社会保険料率は各社の公開情報・2026年時点の制度に基づく目安であり、随時更新します。当社の料金は税別(VAT12%別)で表記しています。

フィリピンの税務全体の位置づけについては「フィリピンの税務完全ガイド」もあわせてご参照ください。

目次

依頼先別の費用相場

フィリピンの記帳代行・税務顧問の料金は、依頼先の種類と業務範囲によって大きく異なります。各社が公開している料金表や市場の相場情報をもとに整理すると、おおむね次のとおりです。

依頼先 月額の目安 主な特徴
フリーランス・個人の記帳担当者 2,500〜5,000ペソ程度 小規模な個人事業向け。法人の申告・税務相談までは期待しにくい
ローカルの小規模会計事務所 5,000〜15,000ペソ程度 取引件数の少ない中小企業向け。対応は英語のみが一般的
会計ソフト込みのローカル会計事務所 15,000〜20,000ペソ程度から 取引件数の上限(例:月500件)を超えると従量課金になる料金体系が多い
日系会計ファーム 30,000〜60,000ペソ程度 日本語での報告・相談、日本本社向けレポーティングに対応。給与計算や年次決算を含むパッケージが多い
BIG4 個別見積もり(高い傾向) グローバルな報告体系、大規模・複雑な案件に強み。スポットの税務相談は時間単価制が一般的

同じ「月額3万ペソ」でも、年次決算・確定申告、給与計算、税務相談が含まれるかどうかで実質的な価格は大きく変わります。見積もりを比較する際は、業務範囲を揃えて比較することが重要です。依頼先を比較する際の観点は「フィリピンの会計事務所・税務顧問はどう選ぶか」で整理しています。

料金を左右する主な要因

要因 料金への影響
月間の取引件数(請求書・領収書・支払伝票の数) 件数が多いほど記帳の工数が増え、料金が上がる
VAT登録の有無 VAT登録事業者は四半期のVAT申告やSLSP(売上・仕入明細)の提出が加わる
PEZA・BOI登録の有無 EZMPR等の定期報告、VATゼロレート証明の更新、登録事業と非登録事業の按分など、追加の報告・論点が発生する
給与計算の対象人数 人数に応じて段階的に加算される料金体系が多い
日本本社向けレポーティング 日本語の月次報告、連結パッケージ対応、締め日の早期化などは追加の工数になる
年次決算・外部監査対応 年次決算は別料金とする事務所が多く、外部監査は監査人との別契約になる

PEZA登録企業に固有の報告義務については「PEZA登録後の税務コンプライアンス完全ガイド」で解説しています。

内製した場合の人件費はいくらか

経理担当者を自社で雇用する場合、給与そのものに加えて、法定の13か月給与(年1か月分、月額換算で給与の12分の1)と、社会保険の事業主負担がかかります。2026年時点の事業主負担は、SSSが月額給与(上限35,000ペソ)の10%と労災保険(EC)、PhilHealthが月額給与の2.5%、Pag-IBIGが月額200ペソ(上限)です。経理スタッフ(給与25,000ペソ)とCPA(給与80,000ペソ)の2つのケースを想定し、月額の総人件費を試算すると次のとおりです(給与額は試算上の仮定であり、経験・職位・勤務地によって異なります)。

項目 経理スタッフ(給与25,000ペソ) CPA(給与80,000ペソ)
基本給与 25,000ペソ 80,000ペソ
13か月給与(月額換算) 2,083ペソ 6,667ペソ
SSS事業主負担(EC含む) 2,530ペソ 3,530ペソ
PhilHealth事業主負担 625ペソ 2,000ペソ
Pag-IBIG事業主負担 200ペソ 200ペソ
月額の総人件費 約30,400ペソ 約92,400ペソ
年額の総人件費 約365,000ペソ 約1,109,000ペソ

この試算には、会計ソフト(BIR登録が必要なCASを含む)の費用、採用費、研修費、退職時の引き継ぎコストは含まれていません。また、担当者が1名だけの場合、休暇や退職の際に業務が止まるリスクがあり、申告内容を別の有資格者がレビューする仕組みもありません。

外部委託した場合の年間費用

カメリアコンサルティングの場合、記帳代行と税務顧問をあわせた標準的なお見積もりは月額30,000ペソ(税別)、年次決算対応は年間20,000〜30,000ペソ(税別)が目安です(外部監査は監査人との別契約)。これを年間に換算し、内製の人件費と比較すると、次のようになります。

比較 年間費用の目安 含まれるもの
外部委託(記帳代行・税務顧問+年次決算) 約380,000〜390,000ペソ(税別) 記帳、月次・四半期・年次の税務申告、税務相談、年次決算。有資格者によるレビュー
内製(経理スタッフ1名) 約365,000ペソ+α 日常の記帳・申告作業。税務判断のレビューや税務調査対応は別途必要になることが多い
内製(CPA1名) 約1,109,000ペソ+α 記帳・申告と一定の税務判断。ただし1名体制のためレビューと継続性に課題

外部委託の料金にはVAT(12%)が別途かかり、税込では年間約425,600〜436,800ペソとなります。ただし、VAT登録事業者であれば、適格なインボイスに基づくこのVATは原則として仕入税額控除の対象となるため、実質的な負担は税別の金額で比較できます。料金は取引件数や業務範囲によって変動するため、実際の金額は個別のお見積もりとなります。

見落とされがちなリスクコスト

内製か外注かの比較では、人件費だけでなく、ミスが起きた場合のリスクコストも考慮する必要があります。たとえば、100万ペソの専門家報酬に対する源泉徴収(税率10%の場合)を漏らしていた場合、中規模以上の納税者であれば、追徴税額10万ペソに加え、加算税25%(2万5,000ペソ)と年12%の利息(1年で1万2,000ペソ)が課され、合計で約13万7,000ペソの負担になります(小規模・零細納税者には軽減された率が適用されます)。さらにコンプロマイズ・ペナルティが加わることもあります。こうした追徴は、1件あたりの金額が外部委託の年間費用の数分の1に達することもあります。ペナルティの計算方法は「税務ペナルティの計算方法と減額交渉」、実務で指摘されやすい論点は「税務調査で日系企業が実際に指摘された論点トップ10」で解説しています。

内製と外注、どちらを選ぶべきか

年間費用だけを見ると、経理スタッフ1名の内製(約365,000ペソ)と外部委託(税別で約380,000〜390,000ペソ)は大きく変わりません。違いは、外部委託には有資格者によるレビューや税務相談、年次決算、担当者不在時の継続性が含まれるのに対し、スタッフ1名の内製ではこれらが含まれず、別途の費用や追加の人員が必要になる点です。CPAを内製すれば有資格者の判断は社内で確保できますが、総人件費は年間約1,109,000ペソと外部委託の約3倍になり、1名体制ではレビューと継続性の課題も残ります。

取引件数が少なく、社内に経理専任の人員を置くほどの業務量がない場合は、外部委託のほうが費用・品質の両面で有利になることが多いといえます。一方、請求書処理や支払業務、日本本社への社内報告など日常業務の量が多い場合は、社内に経理担当者を置いたうえで、税務申告のレビューや税務相談、年次決算を外部に委託する「ハイブリッド型」が現実的です。この場合、外部委託の範囲を絞ることで費用を抑えつつ、有資格者によるチェック体制を確保できます。

よくある質問

月額料金に年次決算や確定申告は含まれますか?

事務所によって異なります。年次決算は別料金とする事務所が多いため、見積もりの際に確認が必要です。当社では記帳代行・税務顧問の月額とは別に、年次決算対応を年間20,000〜30,000ペソ程度(税別)でお見積もりしています。

外部監査の費用も含まれますか?

外部監査は、独立性の観点から記帳・税務申告とは別の監査人との契約になります。監査報酬は企業規模や取引の複雑さによって異なります。

取引件数が少ない場合は安くなりますか?

取引件数や給与計算の人数、PEZA登録の有無などによって料金は変動します。業務範囲をお伺いしたうえで個別にお見積もりします。

内製の経理担当者がいても外部委託は必要ですか?

社内の担当者が日常の記帳を行い、税務申告のレビューや税務相談、年次決算を外部に委託するハイブリッド型は、1名体制のリスクを抑える有効な方法です。

途中で会計事務所を切り替えると追加費用はかかりますか?

過去の帳簿や申告書の確認、未処理分の整理が必要な場合は、初期対応の費用が発生することがあります。引き継ぎ資料の状況によって異なるため、事前にご相談ください。

まとめ・専門家への相談

フィリピンの記帳代行・税務顧問の費用は、依頼先の種類と業務範囲によって大きく異なります。月額料金だけでなく、含まれる業務範囲、内製した場合の総人件費、そしてミスが起きた場合のリスクコストまで含めて比較することで、自社に合った体制を判断できます。カメリアコンサルティングでは、記帳代行・税務顧問を月額30,000ペソ(税別)を目安に、日本語・英語でご提供しています。業務範囲に応じたお見積もりは「お問い合わせ」からお気軽にご相談ください。

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執筆・監修:日比野和樹

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