PEZA登録後の税務コンプライアンス完全ガイド|ITHから5%SCIT/EDRへの移行手続・年次報告義務・VATゼロレート証明の更新【2026年版】

PEZA・BOI登録企業は、登録した瞬間から優遇税制が自動的に適用され続けるわけではありません。ITH(所得税休暇)期間の終了時にはCETI(Certificate of Entitlement to Tax Incentives)の取得、毎年のVATゼロレート証明の更新、EZMPR(月次実績報告)やATIR/ABR(年次税優遇報告)などの継続的な報告義務があり、これらを怠ると優遇税制そのものが否認されるリスクがあります。本記事では、登録後に実際に発生する手続き・報告義務を時系列で整理します。

この記事の要点

  • ITH期間終了後にEDRまたは5%GIEへ移行する際は、年次申告のたびにCETI(優遇税制受給資格証明書)の取得が必要。申請は年次申告期限の90日前までに行う
  • VATゼロレート証明はPEZA・BOI等のIPAへの年次申請制(有効期間は1課税年度のみ)。輸出売上比率70%の要件を満たさないと翌年は失効する
  • PEZAへの報告義務は、月次のEZMPR(毎月20日)、四半期の1702Q写し(BIR提出後15日以内)、年次の1702+監査済財務諸表(BIR提出後30日以内)など複数階層にわたる
  • CREATE法上の優遇適用企業はATIR(年次税優遇報告)・ABR(利益報告)の提出も必要。ATIRは年次申告期限から30日以内、ABR Annex B.3は翌年5月15日まで
  • IT-BPM企業は在宅勤務(WFH)実績を毎月5日までにITS-RCSシステムへ報告する義務がある
  • これらの報告義務を怠ると、優遇税制の適用自体が取り消される、または追徴課税のリスクが生じ得る

最終更新日:2026年9月。PEZA・BOI・FIRBの運用細則に変更があった場合は随時更新します。

フィリピンの税務全体の位置づけについては「フィリピンの税務完全ガイド」もあわせてご参照ください。

目次

登録後に発生する4つの継続的義務

PEZA・BOI登録企業が享受する優遇税制(ITH・5%GIE・EDR等)は、一度登録すれば自動的に継続するものではなく、大きく分けて4種類の継続的な手続き・報告義務によって維持されます。第一に、年次申告のたびに必要な優遇税制の受給資格確認(CETI)、第二に、輸出企業が毎年更新する必要があるVATゼロレート証明、第三に、PEZA・FIRBへの定期報告(月次・四半期・年次)、第四に、IT-BPM企業に固有の在宅勤務実績報告です。これらは登録時に一度説明を受けるだけで、実務担当者が変わると忘れられがちな義務であるため、体系的に押さえておくことが重要です。

ITH終了後の移行手続:CETI(優遇税制受給資格証明書)

ITH(所得税休暇)期間が終了すると、登録企業はEDR(拡張控除制度)または5%GIE(特別法人税)のいずれかに移行しますが、この移行は自動的に有効になるわけではありません。CREATE法の下では、年次申告のたびにCETI(Certificate of Entitlement to Tax Incentives、優遇税制受給資格証明書)をIPA(PEZA・BOI等)から取得する必要があり、これは登録企業がその課税年度に登録条件を遵守していることを確認したうえで発行されます。CETIの申請は、年次申告書(Annual ITR)の法定提出期限の90日前までに行う必要があるとされており、この期限を過ぎると当該課税年度の優遇適用に支障が生じるリスクがあります。実務上、FIRMSポータル経由での電子申請が原則ですが、システムが未整備の場合はPEZA事務局長室(ODG)宛のメール申請が引き続き認められています。活動ごとに個別のCETIが発行される点にも注意が必要です。

VATゼロレート証明:毎年の更新と輸出比率70%要件

輸出企業向けのVATゼロレート適用は、一度証明書を取得すれば永続するものではなく、課税年度ごとに更新申請が必要です。申請はFIRB様式に基づきIPA経由で行い、当該課税年度の第4四半期から翌課税年度の第1四半期にかけての期間に提出するのが実務上の目安です。IPAは、総売上高に占める輸出売上高の比率が70%以上であることを確認したうえで証明書を発行し、この要件を下回った年は翌年のゼロレート適用が失効します。証明書には企業名・TIN・管理番号・登録プロジェクト内容・対象課税年度が記載され、取引先(仕入先)に提示することでVATゼロレートでの仕入れが可能になります。CREATE MORE法によるVATゼロレート適用範囲の拡大(High-Value DME等)については「CREATE MORE法で優遇税制はこう変わったか」もあわせてご参照ください。

PEZAへの定期報告義務一覧

PEZA登録企業には、月次・四半期・年次にわたる複数の報告義務があります。主なものを整理すると次の通りです。

報告書 頻度 期限 提出先
EZMPR(エコゾーン月次実績報告) 毎月 翌月20日 PEZA
四半期法人税申告書(Form 1702Q)の写し 四半期 BIR提出後15日以内 PEZA
年次申告書(Form 1702)+監査済財務諸表 年次 BIR提出後30日以内 PEZA
General Information Sheet(GIS) 変更時 SEC提出後30日以内 PEZA
役員・資本構成の変更報告 変更時 変更後30日以内 PEZA

これらに加え、CREATE法上の優遇適用企業には、ATIR(Annual Tax Incentives Report、年次税優遇報告)を年次申告期限から30日以内に、ABR(Annual Benefits Report、年次便益報告)のAnnex B.3を翌年5月15日までに、それぞれtimta@peza.gov.phおよびfirbmeg@ntrc.gov.ph宛に提出する義務があります。ATIR・ABRは、企業が実際に受けた優遇税制の内容(免税額・控除額等)を政府側が把握するための報告で、通常の税務申告とは別建ての義務である点に注意が必要です。

IT-BPM企業特有の義務:在宅勤務(WFH)実績報告

BPO・ITエンタープライズなどIT-BPM系のPEZA登録企業には、在宅勤務(Work-From-Home、WFH)の実績を毎月5日までにITS-RCSシステムへ報告する義務があります。CREATE MORE法により労働力の一定割合までWFHが認められるようになった一方で、この報告義務自体は継続しており、実際のWFH比率が登録条件・IPAガイドラインの上限を超えていないかをPEZA側が継続的にモニタリングする仕組みになっています。報告を怠ると、WFH自体の許容とは別に、報告義務違反として指摘を受ける可能性があります。

報告義務を怠った場合のリスク

これらの報告義務は、単なる事務手続きにとどまらず、優遇税制の適用継続そのものに関わります。CETIを期限内に取得できなければ、その課税年度の優遇適用(EDRまたは5%GIE)に支障が生じ得ますし、VATゼロレート証明の更新を怠れば、翌年度の仕入れにVATが課されることになり資金繰りに影響します。また、EZMPRやATIR/ABRなどの報告を継続的に怠ると、PEZA側から登録条件の不遵守と判断され、最悪の場合は優遇税制の取り消し(登録の取消しを含む)につながるリスクもあります。日系現地法人の場合、日本本社から派遣された管理者が交代するタイミングでこれらの報告義務の引き継ぎが漏れるケースが実務上少なくないため、報告カレンダーを社内で明文化しておくことをおすすめします。年間を通じた税務・会計コンプライアンスカレンダー全体については「フィリピンの税務・会計申告期限カレンダー」もあわせてご参照ください。

よくある質問

CETIを期限内に取得できなかった場合、その年の優遇は受けられませんか?

CETIの申請は年次申告期限の90日前までに行うのが原則です。期限を過ぎた場合の具体的な救済措置は個別事情により異なるため、遅延が見込まれる場合は早めにIPA(PEZA・BOI等)へ相談することをおすすめします。

VATゼロレート証明はどのタイミングで更新申請すればよいですか?

実務上は、当該課税年度の第4四半期から翌課税年度の第1四半期にかけての期間に申請するのが目安です。輸出売上比率70%の要件を満たしているかどうかも、この時期に確認されます。

EZMPRなどの月次報告を1回怠っただけでも問題になりますか?

単発の遅延であれば是正の余地がある場合が多いですが、継続的な不履行はPEZA側から登録条件の不遵守と判断されるリスクが高まります。報告漏れに気づいた時点で速やかに提出・是正することをおすすめします。

ATIR・ABRは法人税申告書とは別に提出が必要ですか?

はい。ATIR・ABRはCREATE法上の優遇適用企業が受けた優遇内容を政府側が把握するための別建ての報告で、年次法人税申告書とは提出先・様式ともに異なります。

日系現地法人が特に注意すべき点は何ですか?

日本本社から派遣される管理者の交代時に、これらの継続的な報告義務の引き継ぎが漏れやすい点です。報告カレンダーを社内文書として明文化し、誰が担当しても抜け漏れが生じない体制を整えることをおすすめします。

まとめ・専門家への相談

PEZA・BOI登録による優遇税制は、登録した時点がゴールではなく、CETIの取得・VATゼロレート証明の更新・各種報告義務の履行という継続的なプロセスによって初めて維持されます。特に日系現地法人では、これらの実務が現地スタッフと日本人駐在員のどちらの担当か曖昧になりがちで、結果として報告漏れが生じるケースが見られます。自社の登録内容に応じた報告カレンダーの整備、CETI・VATゼロレート証明の更新実務については、専門家への相談をおすすめします。カメリアコンサルティングでは、PEZA・BOI登録企業の継続コンプライアンス支援にも対応しています。

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執筆・監修:日比野和樹

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